このシミュレーションでわかること
物体を凸レンズの焦点より外側に置くと、レンズの反対側に上下左右が逆向きの実像ができ、スクリーンに映ります。物体をレンズに近づけるほど実像はレンズから遠くなって大きくなり、焦点距離の2倍の位置では物体と同じ大きさになります。物体が焦点の上にあると像はできず、焦点より内側では、レンズをのぞくと物体と同じ向きの大きな虚像が見えます。
授業での使い方
導入:身近な体験から問いをつくる
虫眼鏡で窓の外の景色を紙に映すと逆さまに映り、近くの文字をのぞくと同じ向きで大きく見えます。「同じレンズなのに、なぜ見え方がちがうのか」を問いにして、物体の位置に注目させます。
展開:5つの場合を比べて表にまとめる
光学台での実験の前後に、「物体の位置」のボタン(2fより遠く/2f/fと2fの間/焦点の上/焦点の内側)で5つの場合を順に映し、像の位置・大きさ・向きを表にまとめさせます。「作図する光」で①だけ・②だけを表示すると、作図の手順を1本ずつ確かめられます。物体をドラッグして少しずつ動かせば、像の位置と大きさが連続して変わる様子も見られます。
まとめ:作図と定期テストの確かめ
ノートにかいた作図をシミュレーターの図と見比べて確かめます。「光の束を表示」では、物体の1点から出た光がレンズのどこを通っても像の1点に集まることがわかります。「レンズの上半分をかくす」は、定期テストでよく出る問題の確かめに使えます。
生徒への問いの例
- 物体をレンズから遠ざけていくと、スクリーンにできる像の位置と大きさはどう変わるでしょう。
- 物体を焦点の上に置くと、スクリーンをどこに動かしても像が映らないのはなぜでしょう。3本の光を使って説明しましょう。
- 凸レンズの上半分を厚紙でかくすと、スクリーンの像はどうなるでしょう。
しくみ・解説
作図に使う3本の光
- 光軸に平行に進む光は、レンズで屈折したあと、反対側の焦点を通る(①赤)
- レンズの中心を通る光は、そのまま直進する(②緑)
- 焦点を通ってからレンズに入る光は、屈折したあと光軸に平行に進む(③青)
物体の先端から出たこれらの光が、レンズを通ったあとで交わる点が像の先端です。3本のうち2本をかけば像の位置は決まります。レンズを通った光が広がって交わらないとき(物体が焦点より内側のとき)は、光を逆向きにのばした線(点線)が交わる点に像があるように見えます。これが虚像です。
物体の位置と像の早見表
| 物体の位置 | 像のできる位置 | 像の大きさ | 像の種類と向き |
|---|---|---|---|
| 焦点距離の2倍より遠い | 反対側の焦点と、焦点距離の2倍の位置の間 | 物体より小さい | 実像(上下左右が逆) |
| 焦点距離の2倍の位置 | 反対側の焦点距離の2倍の位置 | 物体と同じ | 実像(上下左右が逆) |
| 焦点と、焦点距離の2倍の位置の間 | 反対側の焦点距離の2倍の位置より遠く | 物体より大きい | 実像(上下左右が逆) |
| 焦点の上 | できない | — | — |
| 焦点より内側 | 物体と同じ側(レンズをのぞくと見える) | 物体より大きい | 虚像(物体と同じ向き) |
焦点距離10 cmのレンズの例
| 物体の位置 | 像の位置 | 像の大きさ | 像の種類 |
|---|---|---|---|
| 30 cm(焦点距離の3倍) | 反対側15 cm | 0.5倍 | 実像 |
| 20 cm(2倍) | 反対側20 cm | 1倍 | 実像 |
| 15 cm(1.5倍) | 反対側30 cm | 2倍 | 実像 |
| 12 cm(1.2倍) | 反対側60 cm | 5倍 | 実像 |
| 10 cm(焦点) | できない | — | — |
| 5 cm(0.5倍) | 物体と同じ側10 cm | 2倍 | 虚像 |
高校:レンズの式
レンズから物体までの距離を a、レンズから像までの距離を b、焦点距離を f とすると、次の式が成り立ちます。虚像のときは b をマイナスとして計算します。像の倍率は m=|b÷a| です。
例1:f=10 cm、a=30 cm → 1/b=1/10-1/30=1/15 → b=15 cm(実像、倍率0.5倍)
例2:f=10 cm、a=5 cm → 1/b=1/10-1/5=-1/10 → b=-10 cm(虚像、倍率2倍)
このシミュレーションで単純化していること
- 厚さを考えない「薄いレンズ」として、作図と同じようにレンズの中心の線で1回だけ光を曲げています(実際の光は、レンズに入るときと出るときの2回屈折します)。
- 光軸に近い光として計算しているので、レンズのふちを通る光のずれ(収差)や、色による焦点のずれは表していません。作図のきまりどおり、レンズの外を通るように見える光も中心の線で曲げています。
- 見やすさのため、物体やレンズを実際の実験より大きく描いています(画面の7 pxを1 cmとしています)。
- 横から見た図では上下の逆転しかわからないため、右上の「正面から見ると」で上下左右が逆になることを示しています(矢印の旗、ろうそくのろうのたれは、左右を見分けるための目印です)。
参考
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」第1分野(1)身近な物理現象 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1387016.htm
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編」物理(2)波 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1407074.htm
- 中学校理科の教科書(東京書籍「新しい科学」1年、啓林館「未来へひろがるサイエンス」1年 など)の「光と音」の単元
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「凸レンズの像(作図)シミュレーター」 https://shimulabo.com/sims/totsu-lens/よくある質問
- 実像と虚像のちがいは?
- 実像は、レンズを通った光が実際に集まってできる像で、スクリーンに映ります。凸レンズでできる実像は上下左右が逆向きです。虚像は、光が集まらず、レンズをのぞいたときに光がそこから出ているように見える像で、スクリーンには映りません。凸レンズの虚像は物体と同じ向きで、物体より大きく見えます。
- 物体を焦点に置くと像ができないのはなぜ?
- 焦点から出た光は、凸レンズで屈折したあと光軸に平行に進みます。物体の先端から出た光がどれもたがいに平行になって交わらないため、実像も虚像もできません。物体を外側から焦点に近づけていくと、像はレンズからどんどん遠く、大きくなっていきます。
- 凸レンズの上半分をかくすと、像はどうなる?
- 像は欠けずに全体が映り、暗くなります。物体の1点から出た光は、レンズのいろいろな場所を通って像の1点に集まるので、下半分を通った光だけでも像全体ができます。レンズを通る光の量が減るので暗くなります。
- 虫眼鏡で物が大きく見えるのはなぜ?
- 虫眼鏡は凸レンズです。物体を焦点より内側に置いてのぞくと、物体と同じ向きの大きな虚像が見えます。
- 焦点距離を短くすると、像はどう変わる?
- 物体を同じ位置に置いたままでも、焦点距離が短い(ふくらみの大きい)レンズほど光を大きく曲げるので、実像はレンズに近い位置にでき、小さくなります。焦点距離のスライダーや焦点Fのドラッグで確かめられます。
- カメラや目でも同じことが起きているの?
- はい。カメラはレンズでつくった実像を撮像素子に映し、目は水晶体(凸レンズのはたらき)でつくった実像を網膜に映しています。どちらも像は上下左右が逆向きです。