このシミュレーションでわかること
中学3年 第1分野(5)運動とエネルギー「力のつり合いと合成・分解」の「水中の物体に働く力」の内容です。学習指導要領の解説では、ゴム膜を張った円筒を水中に沈める実験で水圧と深さの関係や水圧があらゆる向きに働くことに気付かせること、ばねばかりにつるした物体を水中に沈めると示す値が小さくなることから浮力を理解させ、浮力を上面と下面の水圧の差から定性的に捉えさせることが示されています。このシミュレーションでは、その3つの実験(ばねばかり・ゴム膜をはった筒・穴のあいたペットボトル)を切り替えて試せます。
授業での使い方
- 導入:「穴のあいたペットボトル」に切り替え、下の穴ほど水が勢いよく飛ぶことを見せます。「なぜ下の穴ほど勢いがよいのだろう」と問いかけ、2年で学んだ大気圧と結びつけて水圧の予想を立てます。
- 展開:「ゴム膜をはった筒」で、深くするとゴム膜のへこみが大きくなること、筒を横向きにすると左右のへこみが同じになることを確かめます。次に「ばねばかりで浮力をはかる」で物体を少しずつ沈め、ばねばかりの値と浮力の変わり方を右のグラフで読み取ります。実物の実験の結果とくらべるのにも使えます。
- まとめ:物体の大きさ(体積)や質量を変えて、浮力は「水中にある部分の体積」で決まり、物体の重さでは決まらないこと、全部沈めると深さを変えても浮力は変わらないことを確かめます。質量を小さくして、物体が浮く条件も考えます。
生徒への問いの例:
- 物体を全部沈めたあと、さらに深く沈めると、ばねばかりの値はどうなるだろう。それはなぜだろう。
- 同じ大きさで、質量が100gの物体と300gの物体では、はたらく浮力はどちらが大きいだろう。
- ゴム膜をはった筒を縦向きにして沈めたとき、上と下のゴム膜のへこみ方がちがうのはなぜだろう。このちがいと浮力には、どんな関係があるだろう。
しくみ・解説
用語の意味
- 水圧とは、水の重さによって生じる圧力のことで、水中の物体の表面に垂直に、あらゆる向きからはたらきます。
- 浮力とは、水中にある物体にはたらく上向きの力のことで、物体の下の面と上の面にはたらく水圧の差によって生じます。
- 圧力とは、面を垂直に押す力の、1m²(または1cm²)あたりの大きさです。単位はパスカル(Pa)で、1 Pa=1 N/m²です。
水圧の式と早見表
中学校の約束(100gの物体にはたらく重力=1N)では、深さ1cmごとに約0.01 N/cm²(約100 Pa)、1mで約10 kPa大きくなります。
深さ1cmの水圧は、底面積1cm²・高さ1cmの水(1cm³=1g)の重さ、0.01Nが1cm²の面を押していると考えるとわかります。深さが2倍、3倍になると、上にある水の重さも2倍、3倍になるので、水圧は深さに比例します。
| 水の深さ | 水圧(1cm²あたりの力) | 水圧(パスカル) |
|---|---|---|
| 1cm | 0.01 N/cm² | 100 Pa(1 hPa) |
| 10cm | 0.1 N/cm² | 1,000 Pa(1 kPa) |
| 50cm | 0.5 N/cm² | 5,000 Pa(5 kPa) |
| 1m | 1 N/cm² | 10,000 Pa(10 kPa) |
| 10m | 10 N/cm² | 100,000 Pa(100 kPa)=大気圧(約101 kPa)とほぼ同じ |
正確に9.8 N/kgで計算すると、深さ1mの水圧は9.8 kPaです。海で10m深くもぐるごとに、およそ1気圧ずつ大きな圧力がかかることになります。
浮力の求め方
力のつり合い:物体にはたらく重力 = 浮力 + ばねばかりが引く力
例:体積100cm³(5cm×5cm×高さ4cm)、質量300gの物体は、空気中でばねばかりが3.00Nを示します。全部水に沈めると2.00Nになったので、浮力は 3.00-2.00=1.00N です。
水圧の差で確かめると、上面が深さ2cmのとき、上面を押す力は 0.02 N/cm²×25cm²=0.50N(下向き)、下面(深さ6cm)を押す力は 0.06 N/cm²×25cm²=1.50N(上向き)。その差 1.50-0.50=1.00N が浮力になります。横から押す力は、左右で同じ大きさなので打ち消し合います。
| 物体(直方体) | 体積 | 水中に1cm沈めるごとにふえる浮力 | 全部沈めたときの浮力 |
|---|---|---|---|
| 小(5cm×5cm×高さ2cm) | 50 cm³ | 0.25 N | 0.50 N |
| 中(5cm×5cm×高さ4cm) | 100 cm³ | 0.25 N | 1.00 N |
| 大(5cm×5cm×高さ8cm) | 200 cm³ | 0.25 N | 2.00 N |
物体を少しずつ沈めると、水中にある部分の体積に比例して浮力が大きくなります。全部沈んだあとは、深くしても上面と下面の水圧の差(=物体の高さ分の水圧)が変わらないので、浮力は一定です。浮力の大きさは物体の体積(水中にある部分)で決まり、物体の質量や材質には関係しません。
浮くか、沈むか
物体を全部沈めたときの浮力が物体の重力より大きいと、物体は浮き上がり、水中にある部分の浮力と重力がつり合ったところで浮かびます。これは、物体の密度(1cm³あたりの質量)が水の密度(約1 g/cm³)より小さいときです。このシミュレーションでは、質量が体積の数値より小さいと浮き、ばねばかりの値は0Nになります。
| 物質 | 密度〔g/cm³〕 | 水に入れると |
|---|---|---|
| 鉄 | 7.87 | 沈む |
| 銅 | 8.96 | 沈む |
| アルミニウム | 2.70 | 沈む |
| 水(4℃) | 1.00 | — |
| 氷(0℃) | 0.92 | 浮く |
| ポリプロピレン | 約0.9 | 浮く |
| 木(スギ・乾燥) | 約0.4 | 浮く |
発展:アルキメデスの原理(高校 物理基礎・物理)
水中の物体にはたらく浮力の大きさは、物体が押しのけた水の重さに等しくなります(アルキメデスの原理)。式では F=ρVg(ρ:水の密度、V:水中にある部分の体積、g:重力加速度)です。体積100cm³の物体を全部沈めると100cm³=100gの水を押しのけるので、浮力は約1Nになります。鉄でできた船が浮くのは、中が空洞になっていて、船全体として押しのける水の体積が大きいからです。
ペットボトルの穴から出る水
深い位置の穴ほど水圧が大きいので、水が勢いよく出ます。高校の物理では、穴から出る水の速さが v=√(2gh)(h:水面から穴までの深さ)になることを学びます。深さ4cmで約0.9 m/s、16cmで約1.8 m/sです。同じ深さの穴なら、向きがちがっても同じ勢いで出ます。
参考
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」理科 第1分野(5)運動とエネルギー(ア)(ア)力のつり合いと合成・分解/「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」(水圧の実験、浮力と水圧の定性的な関係)
- 文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」
- 国立天文台 編『理科年表』(物質の密度)
- 中学校理科の教科書(第3学年)「水中の物体に働く力」、高等学校「物理基礎」「物理」の教科書(浮力・アルキメデスの原理)
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「水圧と浮力のシミュレーター(ばねばかり・ゴム膜・ペットボトル)」 https://shimulabo.com/sims/suiatsu-fuyuu/よくある質問
- 水圧とは何ですか?
- 水の重さによって生じる圧力です。水中の物体の表面に垂直に、あらゆる向きからはたらき、深さに比例して大きくなります。深さ1cmごとに約0.01 N/cm²(約100 Pa)、1mで約10 kPa大きくなります。
- 浮力の大きさはどうやって求めますか?
- 空気中でのばねばかりの値から、水中でのばねばかりの値を引いて求めます。空気中で3.0N、水中で2.0Nなら、浮力は1.0Nです。浮力は、物体の下の面と上の面を押す水圧の差によって生じます。
- 物体を深く沈めるほど、浮力は大きくなりますか?
- 物体の一部が水の上に出ている間は、沈めるほど(水中にある部分の体積が大きくなるほど)浮力は大きくなります。全部沈んだあとは、深さを変えても浮力は変わりません。上面と下面の深さの差(物体の高さ)が変わらず、水圧の差も同じだからです。
- 重い物体ほど、浮力は大きくなりますか?
- なりません。浮力の大きさは、水中にある部分の体積で決まります。同じ体積なら、鉄でもアルミニウムでも、全部沈めたときの浮力は同じです(100cm³なら約1N)。
- 物体が水に浮くか沈むかは、何で決まりますか?
- 物体にはたらく重力と、全部沈めたときの浮力の大きさで決まります。浮力のほうが大きければ浮き、重力のほうが大きければ沈みます。物体の密度が水の密度(約1 g/cm³)より小さいと浮き、大きいと沈むともいえます。
- 鉄でできた船が水に浮くのはなぜですか?
- 船は中が空洞になっているので、船全体として押しのける水の体積が大きく、その分の大きな浮力がはたらくからです。船全体の平均の密度は水より小さくなっています。浮力が押しのけた水の重さに等しいことを、アルキメデスの原理といいます。