このシミュレーションでわかること
物質は温度によって固体・液体・気体とすがたを変えます(状態変化)。このとき変わるのは粒子の並び方・間隔・動きで、粒子の数(=質量)は変わりません。純粋な物質は、とけている間(融点)と沸騰している間(沸点)は、加熱を続けても温度が一定になります。水は例外で、氷になると体積が約1.1倍に増えます。
授業での使い方
導入:グラフの形を予想する
物質を「水」にして「⏮ 固体にもどす」を押し、−40℃の氷から始めます。「同じ火力で温め続けると、温度はどう変わる?」とグラフの形を予想させてから「🔥 加熱する」を押し、0℃と100℃で平らになる様子を確かめます。
展開:粒子のモデルで説明する
右のグラフを指でなぞると、その時点の粒子のようすが左に出ます。固体・液体・気体のそれぞれで、粒子の並び方・間隔・動きを、ノートにかいた粒子のモデルと比べさせます。物質をエタノールや窒素に変えて、融点・沸点が物質ごとに決まっていることも確かめます。
まとめ:体積と質量
粒子の数(48個)は最後まで変わらないこと、体積(統計欄の「体積(相対)」)は大きく変わることを確認し、「状態変化では体積は変わるが質量は変わらない」とまとめます。小学4年では、水を0℃より下げると氷がピストンを少し押し上げ、体積が増えることを確かめます。
児童・生徒への問いの例
- 氷がとけている間は、加熱を続けているのに温度が0℃のまま上がらない。加えた熱は何に使われているのだろう?
- エタノールを入れたポリエチレンの袋に熱い湯をかけると、袋が大きくふくらむ。袋の中の粒子の数は増えたのだろうか?質量はどうなる?
- 水が氷になると体積が増える。冬の寒い日に、水道管が破裂することがあるのはなぜだろう?
しくみ・解説
固体・液体・気体と粒子のモデル
| 状態 | 粒子の並び方 | 粒子の動き | 粒子の間隔と体積 |
|---|---|---|---|
| 固体 | 規則正しく並んでいる | その場で細かくふるえている(振動) | せまい。形も体積も変わりにくい |
| 液体 | 並び方がくずれ、寄り集まっている | たがいの位置を入れかえながら動き回る | 固体とあまり変わらない。形は入れ物に合わせて変わる |
| 気体 | ばらばらに離れている | 空間を自由に飛び回る | とても広い。体積は液体の数百〜数千倍(水では約1,700倍) |
温度が高いほど、粒子の運動は激しくなります。粒子どうしは引き合っていますが、運動が激しくなると結びつきから離れやすくなり、固体→液体→気体と変化します。
融点・沸点と加熱のグラフ
純粋な物質を一定の火力で加熱すると、とけ始めてから全部とけ終わるまで(融点)と、沸騰し始めてから全部が気体になるまで(沸点)は、加熱を続けても温度が上がりません。加えた熱が、粒子どうしの結びつきを切って状態を変えることに使われるからです。融点・沸点は物質の種類によって決まっていて、物質の量には関係しません(量が多いと、平らな部分が長くなるだけです)。
| 物質 | 融点 | 沸点 | 20℃での状態 |
|---|---|---|---|
| 水 | 0℃ | 100℃ | 液体 |
| エタノール | −115℃ | 78℃ | 液体 |
| 窒素 | −210℃ | −196℃ | 気体 |
| 酸素 | −218℃ | −183℃ | 気体 |
| 水銀 | −39℃ | 357℃ | 液体 |
中学校の実験でよく使うパルミチン酸の融点は約63℃です(このシミュレーターには入れていません)。水とエタノールのような混合物は、沸騰している間も温度が少しずつ変わり、平らな部分がはっきりしません。この沸点のちがいを使って、みりんや赤ワインからエタノールを取り出すのが蒸留です。
体積の変化(計算の例)
水18 g(体積は約18 cm³)を100℃・1気圧の水蒸気にすると、約30.6 L(約30,600 cm³)になります。30,600÷18 ≒ 1,700 なので、水が水蒸気になると体積は約1,700倍です。統計欄の「体積(相対)」は、液体のときの体積を1として、気体の部分は1気圧の気体として計算しています。
| 物質 | 沸点で気体になったとき(液体を1) | 20℃の気体(液体を1) |
|---|---|---|
| 水 | 約1,700倍(100℃) | —(液体) |
| エタノール | 約490倍(78℃) | —(液体) |
| 窒素 | 約180倍(−196℃) | 約690倍 |
| 酸素 | 約260倍(−183℃) | 約860倍 |
| 水銀 | 約3,500倍(357℃) | —(液体) |
水の例外:氷は体積が増える
水が氷になると、水の粒子がすき間の多い並び方で結びつくため、体積が約1.1倍(正確には約1.09倍)に増えます。同じ質量で体積が大きいので、氷は水に浮きます。ほかの多くの物質は、固体になると体積が数%〜十数%小さくなり、固体は液体に沈みます(例:ろう)。このシミュレーターでも、水を0℃にすると氷が水の上に浮き、ほかの物質では固体が底に沈みます。
模式的にしている点
- 粒子の数(48個)と大きさは模式的です。実際の粒子はとても小さく、数もけた違いに多くあります。固体の粒子をつなぐ線は、粒子どうしが結びついていることを表す模式です。
- 気体の体積は、図では液体の数倍に縮めて描いています。実際の値は統計欄の「体積(相対)」を見てください。気体になったあとは、絶対温度に比例して体積が増えるように描いています(ピストンの中は1気圧のまま)。
- 水以外の固体の体積は、一律に液体の約0.9倍として表示しています(実際の割合は物質によってちがいます)。液体の体積は、水だけ温度による変化(0℃→100℃で約4%増)を入れ、ほかの物質は一定にしています。
- アニメの動きの速さは見やすく調整しています。統計欄の「粒子の動き(相対)」は、0℃のときを1とした粒子の運動の激しさの目安で、絶対温度(℃の値+273)に比例します。
- 沸点より低い温度でも、液体の表面からは少しずつ蒸発が起きていますが、このシミュレーターでは省略しています。
参考
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」理科 第4学年 A(2)金属,水,空気と温度
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」理科 第1分野(2)身の回りの物質(ウ)状態変化/「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」
- 文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」
- 中学校理科の教科書(第1学年)「物質の融点と沸点」の表(融点・沸点の値)
- M. Tanaka ほか(2001)Metrologia 38, 301–309(水の密度の式。液体の水の体積の計算に使用)
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「状態変化と粒子のシミュレーター(固体・液体・気体)」 https://shimulabo.com/sims/joutai-henka/よくある質問
- 融点や沸点で温度が一定になるのはなぜ?
- 加えた熱が、粒子どうしの結びつきを切って状態を変えることに使われるからです。全部とけ終わる(全部が気体になる)までは温度が上がらず、状態が変わり終わると再び温度が上がり始めます。これは純粋な物質の性質で、混合物でははっきり一定になりません。
- 水が氷になると体積が増えるのはなぜ?
- 氷では、水の粒子がすき間の多い並び方で結びつくため、同じ質量でも体積が約1.1倍になります。そのため氷は水に浮きます。多くの物質は逆に、固体になると体積が小さくなります。
- 状態変化で質量は変わる?
- 変わりません。状態が変わっても粒子の数は同じで、変わるのは粒子の並び方と間隔です。体積は変わって質量は変わらないので、密度(1 cm³あたりの質量)は変わります。
- 湯気は気体?
- 湯気は気体ではなく、水蒸気が冷やされてできた小さな水の粒(液体)です。水蒸気(気体)は目に見えません。やかんの口のすぐ近くが透明に見えるのは、そこがまだ水蒸気のままだからです。
- 蒸発と沸騰のちがいは?
- 蒸発は、沸点より低い温度でも液体の表面から気体になる変化です。沸騰は、沸点で液体の内部からも気体になる変化で、泡がさかんに出ます。水を沸騰させたときの泡の正体は水蒸気です。
- 物質の量を増やすと沸点は変わる?
- 変わりません。量を増やすと、沸騰が終わるまでの時間(グラフの平らな部分の長さ)が長くなるだけで、温度は同じです。融点も同じです。そのため、融点や沸点を調べると物質の種類を見分ける手がかりになります。