このシミュレーションでわかること
注射器にとじこめた空気をピストンでおすと、体積は小さくなりますが、おし返す力(手ごたえ)は大きくなります。おしちぢめるほど手ごたえは大きくなり、手をはなすとピストンはもとの位置にもどります。一方、とじこめた水はおしちぢめられません。強くおしても体積は変わりません。空気と水を半分ずつ入れると、空気の部分だけがちぢみます。粒のモデル図で、空気の粒どうしの間が小さくなる様子も見られます。
授業での使い方
導入:おすとどうなるか予想する
実際に注射器(または空気でっぽうのつつ)の空気をおしたあと、「中の空気はどうなっているのだろう」と問いかけます。このシミュレーターで、粒のモデル図を見ながら、体積が小さくなっても粒の数は変わらず、粒どうしの間がつまることを確かめます。ノートにかいた「空気の図」と比べさせると、考えを表現する活動につながります。
展開:体積と手ごたえの関係を調べる
スライダー(または注射器の図を指で下へなぞる)でおす力を少しずつ大きくし、中の体積(目もり)と手ごたえをグラフに記録します。「中身」を「水だけ」に切りかえると、いくらおしても目もりは40 mLのままで、グラフの点がまっすぐ上に並ぶことから、水はおしちぢめられないことがはっきりわかります。
まとめ:空気と水を半分ずつ・身の回りの道具
「空気と水(半分ずつ)」にすると、空気の部分だけがちぢみ、水の量(20 mL)は変わりません。最後に、空気でっぽう・ボール・自転車のタイヤなど、とじこめた空気の性質を利用した物の仕組みを説明させます。
児童への問いの例
- とじこめた空気をおすと、体積が小さくなった。中の空気の粒の数は、へったのだろうか?
- 空気をおしちぢめればおしちぢめるほど、手ごたえはどうなるだろう?手をはなすと、ピストンはどうなるだろう?
- 空気でっぽうの前の玉が勢いよく飛ぶのはなぜだろう?中に水を入れたら、玉は飛ぶだろうか?
しくみ・解説
言葉の意味(1文で)
- とじこめた空気とは、注射器やつつに入れて、出入りできないようにした空気のことです。
- 体積とは、物がしめている場所の大きさのことで、注射器では目もり(mL)で読み取れます。
- おし返す力(手ごたえ)とは、おしちぢめられた空気が、もとの体積にもどろうとしてピストンをおし返す力のことです。
- 空気はおしちぢめられるのは、空気の粒どうしの間にすき間があり、おすとその間が小さくなるからです。
- 水はおしちぢめられないのは、水の粒どうしの間がつまっていて、ちぢむすき間がほとんどないからです。
体積と手ごたえの早見表(このシミュレーターの値)
| 空気の体積 | 手ごたえ(おす力) | おし返す強さ(もとを1) | 粒の間かく(もとを1) |
|---|---|---|---|
| 40 mL(もと) | 0 kg | 1.00倍 | 1.00倍 |
| 35 mL | 約0.9 kg | 1.14倍 | 0.96倍 |
| 30 mL | 約2.1 kg | 1.33倍 | 0.91倍 |
| 25 mL | 約3.7 kg | 1.60倍 | 0.86倍 |
| 20 mL(もとの半分) | 約6.2 kg | 2.00倍 | 0.79倍 |
| 15 mL | 約10.3 kg | 2.67倍 | 0.72倍 |
注射器(中身40 mL・ピストンの断面積6 cm²)の空気を、ゆっくりおしたときの値です。体積がもとの半分になるまでおすと、約6 kgのものを持ち上げるくらいの力が必要になります。半分よりさらにちぢめようとすると、手ごたえは急に大きくなります。
先生向けの補足:ボイルの法則
はじめ:大気圧 p₀ ≒ 101.3 kPa、体積 V₀ = 40 mL
おす力 F のとき:p = p₀ + F ÷ A(A=ピストンの断面積)、V = V₀ × p₀ ÷ p
例:V = 20 mL(半分)→ p = 2 p₀ ≒ 203 kPa → F = p₀ × A ≒ 101,325 Pa × 0.0006 m² ≒ 60.8 N(約6.2 kg重)
このシミュレーターの「手ごたえ」は、ピストンをおす力を「kg重」(その重さのものを持ち上げるくらいの力)で表しています。1 kg重は約9.8 Nです。粒の間かくは、体積の3乗根(体積が半分なら約0.79倍)として計算しています。ボイルの法則は高校の物理で学ぶ内容で、小学4年では「おしちぢめるほど手ごたえが大きくなる」という関係をとらえることが目標です。
水は本当に少しもちぢまない?
実際の水も、ものすごく大きな力を加えるとほんのわずかにちぢみますが、その量はとても小さく、このシミュレーターの最大の力(12 kg)でおしても、40 mLの水は約0.004 mLしかちぢみません。注射器の目もりではまったく読み取れないので、「水はおしちぢめられない」と考えてよいのです。
空気でっぽうの玉が飛ぶしくみ
空気でっぽうは、つつの前と後ろを玉(前玉・後ろ玉)でふさいで、空気をとじこめた道具です。おしぼうで後ろ玉をおしこむと、とじこめた空気がおしちぢめられ、おし返す力が大きくなります。その力が、前玉をつつにとめている力より大きくなったとき、前玉が勢いよくおし出されて飛びます。つつの中に水を入れると、水はおしちぢめられないので、おし返す力をためることができず、前玉は勢いよくは飛びません(水がおし出されるだけです)。
身の回りの「とじこめた空気」
| 道具 | 空気の性質の使い方 |
|---|---|
| ボール | 中の空気がおしちぢめられ、おし返す力ではずむ |
| 自転車・自動車のタイヤ | おしちぢめた空気で重さを支え、でこぼこの衝撃をやわらげる |
| エアーマット・プチプチ(緩衝材) | 空気のおし返す力で、物をやさしく受け止める |
| 空気でっぽう・ペットボトルロケット | おしちぢめた空気がもとにもどろうとする力で、玉や水を飛ばす |
このシミュレーションで単純化していること
- 温度は変わらないものとしています。実際には、空気を速くおしちぢめると少しあたたかくなり、手ごたえが計算より少し大きくなります(ゆっくりおすと、この表の値に近くなります)。
- ピストンと注射器の間のまさつや、空気のもれは考えていません。実際の注射器では、まさつがあるため、手をはなしてもぴったりもとの位置まではもどらないことがあります。
- 空気の粒(30こ)と水の粒の数・大きさは模式的です。実際の粒はとても小さく、数もけた違いに多くあります。空気の粒の図は平面にかいていますが、統計欄の「粒の間かく」は立体で考えた値です。
- 「水だけ」で指をなぞったときの手ごたえは、おしこもうとした量に合わせて大きくなるようにしています(ピストンは動きません)。
参考
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」第4学年 A(1)空気と水の性質(小学校学習指導要領解説)
- 小学校理科の教科書(第4学年「とじこめた空気と水」の単元)
- 国立天文台 編『理科年表』(標準大気圧 101.325 kPa、水の圧縮率 約4.6×10⁻¹⁰ /Pa)
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「とじこめた空気と水のシミュレーター(注射器をおすと)」 https://shimulabo.com/sims/kuuki-mizu/よくある質問
- とじこめた空気をおすと、体積と手ごたえはどうなりますか?
- 体積は小さくなり、おし返す力(手ごたえ)は大きくなります。おしちぢめるほど手ごたえは大きくなり、手をはなすと、空気がおし返してピストンはもとの位置にもどります。
- 水はなぜおしちぢめられないのですか?
- 水の粒どうしの間がつまっていて、ちぢむすき間がほとんどないからです。空気は粒どうしの間にすき間が多いので、おすとその間が小さくなり、体積が小さくなります。
- 空気をおしちぢめると、空気の量(粒の数)はへりますか?
- へりません。とじこめているので、空気は出入りしていません。粒の数は同じまま、粒どうしの間が小さくなって体積が小さくなります。
- 空気と水を半分ずつ入れておすと、どうなりますか?
- 空気の部分だけがちぢみ、水の体積は変わりません。たとえば空気20 mLと水20 mLなら、水は20 mLのままで、空気だけが小さくなります。
- 空気でっぽうの玉が飛ぶのはなぜですか?
- 後ろ玉をおすと、つつの中にとじこめた空気がおしちぢめられ、おし返す力が大きくなります。その力が前玉をとめている力より大きくなると、前玉がおし出されて勢いよく飛びます。
- 体積と手ごたえには、きまった関係がありますか?
- 温度が変わらなければ、空気の体積を半分にすると、中の空気がおし返す強さ(圧力)は2倍になります(ボイルの法則:圧力×体積=一定)。このシミュレーターの注射器では、半分にするのに約6 kgのものを持ち上げるくらいの力が必要です。