このシミュレーションでわかること
物が水に溶ける量には限度があり、その量は水の温度・水の量・溶かす物によってちがいます。限度をこえた分は溶け残り、温度の高い水に溶かした物は、冷やしたり水を蒸発させたりすると結晶として出てきます。物が水に溶けても、水と物とを合わせた重さは変わりません。
授業での使い方
導入(小5):溶けた物はどこへ行った?
水50gにミョウバンを10g入れたときの電子てんびんの値(60.0g)を見せ、「溶けたら重さはどうなるか」を予想させます。スプーンをタップして少しずつ加えても、全体の重さは「水+入れた物」のままであることを確かめます。下の粒子のモデルで、溶けた物は見えなくなっても、水の中に均一に広がっていることを示します。
展開(小5・中1):条件を1つずつ変える
水の量だけ、水温だけ、溶かす物だけを変えて、溶ける限度がどう変わるかを調べます。「🔥 あたためる」で水温を上げると溶け残りが溶け、「❄ 冷やす」で下げると結晶が出てきます(ミョウバン・硝酸カリウムでははっきり出てきますが、食塩はほとんど出てきません)。食塩は「♨ 水を10g蒸発」で取り出せることを比べます。中1では右の溶解度曲線を指でなぞり、点の位置(曲線の上か下か)と溶け残りの関係を読み取らせます。
まとめ(中1):計算で確かめる
下の例題を解いてから、同じ条件をシミュレーターに入れて答え合わせをします。統計欄の「溶けている量」「溶け残り」「濃度」と、図の下の式がそのまま計算の手順になっています。
児童・生徒への問いの例
- 20℃の水50gにミョウバンを10g入れました。溶け残りを全部溶かすには、水温を何℃以上にすればよいでしょう。(答え:約35℃)
- ミョウバンの水溶液は冷やすと結晶が出てくるのに、食塩水を冷やしてもほとんど出てこないのはなぜでしょう。溶解度曲線の形から説明しましょう。
- 水100gに食塩25gを溶かした食塩水の重さと、質量パーセント濃度はいくつでしょう。(答え:125g、20%)
しくみ・解説
用語の意味
- 水溶液とは、物が水に溶けてできた、すき通った液のことです(色がついていても、すき通っていれば水溶液です)。
- 溶質は溶けている物質、溶媒は溶質を溶かしている液体(水溶液では水)、溶液は溶質が溶媒に溶けた液のことです。
- 溶解度とは、100gの水に溶ける物質の最大の質量[g]のことで、物質の種類と水の温度によって決まります。
- 飽和水溶液とは、物質が溶解度まで溶けていて、それ以上は溶けない水溶液のことです。
- 溶解度曲線とは、水の温度と溶解度の関係を表したグラフのことです。
- 再結晶とは、固体の物質をいったん水に溶かし、水溶液を冷やしたり水を蒸発させたりして、再び結晶として取り出すことです。
- 質量パーセント濃度とは、溶液の質量に対する溶質の質量の割合を百分率[%]で表したものです。
式の早見表
| 求めるもの | 式 | 例 |
|---|---|---|
| 水 x g に溶ける限度 | 溶解度 × x ÷ 100 | 20℃のミョウバン、水50g:11.4 × 50 ÷ 100 = 5.7 g |
| 溶け残り | 入れた量 − 溶ける限度 | 10 − 5.7 = 4.3 g |
| 水溶液の重さ | 水の重さ + 溶けた物の重さ | 50 + 5.7 = 55.7 g(溶け残りも合わせると 60 g) |
| 冷やして出てくる結晶 | 溶けていた量 − 冷やした温度での限度 | 硝酸カリウム 水100g 60℃→20℃:109.2 − 31.6 = 77.6 g |
| 水を蒸発させて出てくる結晶 | 溶けていた量 − 残った水に溶ける限度 | 20℃の水100gの食塩水(食塩30g)から水50gを蒸発:30 − 17.9 = 12.1 g |
| 質量パーセント濃度[%] | 溶質の質量 ÷(溶質の質量 + 溶媒の質量)× 100 | 食塩25g+水100g:25 ÷ 125 × 100 = 20 % |
溶けても重さが変わらないわけ(粒子のモデル)
物が水に溶けると、目に見えないほど小さな粒になって、水の粒の間に均一に広がります。粒はなくなったわけではないので、水と物とを合わせた重さは変わりません。時間がたっても、溶けた物が下にたまることはなく、水溶液の濃さはどこも同じです(色のついたコーヒーシュガーや硫酸銅を溶かすと、色が全体に同じように広がることで確かめられます)。図の左下の「粒子のモデル」では、溶けた粒が動き回りながら広がる様子と、限度をこえた分が粒の集まり(固体)として残る様子を表しています。
冷やす? 蒸発させる? 取り出し方は物によってちがう
ミョウバンや硝酸カリウムは、水温によって溶解度が大きく変わる(溶解度曲線の傾きが大きい)ので、高い温度で溶かして冷やすと多くの結晶が出てきます。食塩は水温が変わっても溶解度がほとんど変わらない(60℃で37.1g、20℃で35.8g)ので、冷やしても水100gあたり1.3gしか出てきません。食塩を取り出すには、水を蒸発させる方法が向いています。結晶の形も物質によって決まっていて、食塩は立方体、ミョウバンは正八面体、硝酸カリウムは柱状(針状)、ホウ酸はうろこ状(板状)です。
溶解度の表(水100gに溶ける量[g])
| 水温 | 食塩 | ミョウバン | 硝酸カリウム | ホウ酸 |
|---|---|---|---|---|
| 0℃ | 35.7 | 5.7 | 13.3 | 2.8 |
| 10℃ | 35.7 | 7.6 | 22.0 | 3.6 |
| 20℃ | 35.8 | 11.4 | 31.6 | 4.9 |
| 30℃ | 36.1 | 16.6 | 45.6 | 6.8 |
| 40℃ | 36.3 | 23.8 | 63.9 | 8.9 |
| 50℃ | 36.7 | 36.4 | 85.2 | 11.4 |
| 60℃ | 37.1 | 57.4 | 109.2 | 14.9 |
| 70℃ | 37.5 | 110.5 | 138.0 | 18.7 |
| 80℃ | 38.0 | 321.6 | 168.8 | 23.5 |
小学校の実験でよく使う水50g(50mL)の場合は、この表の値の半分になります。
| 水温 | 食塩 | ミョウバン |
|---|---|---|
| 0℃ | 17.9 g | 2.9 g |
| 20℃ | 17.9 g | 5.7 g |
| 40℃ | 18.2 g | 11.9 g |
| 60℃ | 18.6 g | 28.7 g |
| 80℃ | 19.0 g | 160.8 g |
計算問題の解き方(例題)
例題1(小5) 20℃の水50gに、ミョウバンは何gまで溶けますか。また、10g入れると何g溶け残りますか。
→ 20℃の溶解度は11.4gなので、11.4×50÷100=5.7g。溶け残りは 10−5.7=4.3g。
例題2(小5) 例題1の液を40℃にすると、溶け残りはどうなりますか。そのあと20℃にもどすとどうなりますか。
→ 40℃の水50gには 23.8×50÷100=11.9g まで溶けるので、10gは全部溶けます。20℃にもどすと、5.7gまでしか溶けていられないので、10−5.7=4.3gの結晶が出てきます。
例題3(中1・再結晶) 60℃の水100gに硝酸カリウムを溶けるだけ溶かし、20℃まで冷やしました。出てくる結晶は何gですか。
→ 60℃で109.2g溶けていて、20℃では31.6gまでしか溶けないので、109.2−31.6=77.6g。
例題4(中1・質量パーセント濃度) 20℃の食塩の飽和水溶液の質量パーセント濃度は何%ですか。
→ 水100gに35.8g溶けているので、35.8÷(35.8+100)×100=26.36… 約26.4%。
例題5(中1・蒸発) 20℃の水100gに食塩30gを溶かしました。20℃のまま水を50g蒸発させると、何gの食塩が出てきますか。
→ 残った水50gに溶けるのは 35.8×50÷100=17.9g なので、30−17.9=12.1g。
・溶解度は、理科年表や教科書で一般的に使われる値です。教科書や問題集によって、小数第1位などが少しちがうことがあります。授業やテストでは、使っている教科書や問題に書かれた値で計算してください。表の間の温度は、となりの2つの値を直線で結んで計算しています。
・ミョウバンの値は、教科書と同じく結晶(硫酸カリウムアルミニウム十二水和物)の質量で表しています。理科年表のように水を含まない形(無水物)で表すと、20℃で5.9g、60℃で24.8gと小さな値になります。ミョウバンは70℃をこえると溶ける量が急に増えるため、80℃の値(321.6g)はグラフの外に出ています。
・水1mLを1gとしています。溶けるまでの時間(かき混ぜる時間)や、冷やしてもすぐには結晶が出ない「過飽和」の状態は扱っていません。あたためたときに自然に蒸発する水も考えず、水は「♨ 水を10g蒸発」を押したときだけ減ります。
・粒子のモデルは、粒の数を水100gあたりの溶けた量に比例させた見本の図で、実際の粒の大きさや数ではありません(水の粒はかいていません)。
参考
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」第5学年 A(1)物の溶け方(小学校学習指導要領解説)
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」第1分野(2)ア(イ)水溶液(中学校学習指導要領解説)
- 小学校理科の教科書(東京書籍「新しい理科」、啓林館「わくわく理科」、大日本図書「たのしい理科」など)5年の「物のとけ方」の単元、中学校理科の教科書(東京書籍「新しい科学」、啓林館「未来へひろがるサイエンス」、大日本図書「理科の世界」など)1年の「水溶液」の単元
- 国立天文台 編『理科年表』(丸善出版)物理/化学部「溶解度」
- 日本化学会 編『化学便覧 基礎編』(丸善出版)
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「物の溶け方と溶解度シミュレーター(溶け残り・再結晶・濃度)」 https://shimulabo.com/sims/youkaido/よくある質問
- 溶解度とは何ですか?
- 100gの水に溶ける物質の最大の質量[g]のことです。物質の種類と水の温度によって決まり、たとえば20℃の溶解度は食塩が35.8g、ミョウバンが11.4g、硝酸カリウムが31.6gです。水の量が50gなら、溶ける量はその半分になります。
- ミョウバンは冷やすと出てくるのに、食塩はほとんど出てこないのはなぜですか?
- ミョウバンは水温によって溶ける量が大きく変わりますが、食塩は水温が変わっても溶ける量がほとんど変わらないからです。水100gの場合、60℃から20℃に冷やすと、ミョウバンは57.4−11.4=46.0g出てきますが、食塩は37.1−35.8=1.3gしか出てきません。食塩は水を蒸発させて取り出します。
- 物が水に溶けても重さが変わらないのはなぜですか?
- 溶けた物は、目に見えないほど小さな粒になって水の中に均一に広がっているだけで、なくなったわけではないからです。水50gに食塩5gを溶かすと、食塩水の重さは55gになります。
- 質量パーセント濃度はどうやって求めますか?
- 質量パーセント濃度[%]=溶質の質量÷(溶質の質量+溶媒の質量)×100 で求めます。水100gに食塩25gを溶かした食塩水なら、25÷125×100=20%です。分母は水の質量ではなく、水溶液全体の質量です。
- 溶け残りがあるとき、溶けている物と溶け残りを分けるにはどうしますか?
- ろ過します。ろ紙の上に溶け残り(結晶)が残り、ろ紙を通った液(ろ液)には溶けている物がふくまれています。ろ液を冷やしたり、水を蒸発させたりすると、溶けていた物を取り出せます。
- 教科書の溶解度の値と少しちがいます。
- 溶解度の表は、教科書や資料によって小数第1位などが少しちがうことがあります。特にミョウバンは、結晶(水をふくむ形)の質量で表すか、水をふくまない形で表すかで値が大きくちがいます。このシミュレーターは結晶の質量で表した値(20℃で11.4g)を使っています。授業やテストでは、使っている教科書や問題の値で計算してください。