ふしぎ・現象

街の分断シミュレーター

「ご近所にちょっとだけ同じ人がいると安心」。たったそれだけの弱い好みでも、街は放っておくとくっきり2つに分かれます。悪意ゼロでも起きる「分断」を見てください。

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🔵🟠=2つのグループ/白=空き地。不満な人が空き地へ引っ越すだけで、街は分かれていきます。

シェリングの分居モデル

経済学者シェリングが示した有名なモデルです。各住人は「近所の◯%以上が同じ仲間なら満足、足りなければ引っ越す」というルールだけで動きます。「相手を排除したい」という気持ちはゼロ。それでも、わずかな好みが積み重なると、街全体は強く分断されてしまいます。

シェリングの分居モデルのしくみの図。真ん中の住人のまわり8マスで、同じ仲間の割合が満足ライン35%以上なら満足(例:3人÷7人=43%)、未満なら不満で空き地へ引っ越す(例:2人÷7人=29%)ことと、引っ越しが別の人の不満を生んで連鎖することを示している。
図1 街の分断のしくみ。近所の同じ仲間の割合が満足ラインに届かない人だけが引っ越し、それが連鎖する。PNGで保存・SVG
シェリングの分居モデルを同じスタートから満足ライン20%・35%・50%・70%で動かした結果の比較。はじめは近所の同じ仲間の割合が約50%だが、満足ライン35%でも約8割、70%ではほぼ全員が同じ仲間に囲まれるほど街が分かれる。
図2 満足ラインと分かれ方の比較(シミュと同じ計算の一例)。「3割ほどでいい」という弱い好みでも、街ははっきり分かれる。PNGで保存・SVG

図はタップすると大きく表示されます。資料やSNSに使うときは、出典「シミュラボ」とページのURLを添えてください。

社会の分断やフィルターバブルを考えるうえで示唆に富んだモデルです。

数字で見る「弱い好み」の威力

1971年にトーマス・シェリングが示したこのモデルでは、住人が「近所の3割が同じ仲間なら満足」という、むしろ多様性に寛容といえる条件でも、街はくっきり分かれます。満足ラインを上げていくと分離はさらに進み、7割前後になると「どこに引っ越しても満足できない人」が出て、街が落ち着かなくなります。

満足する同類の割合街の様子
10〜25%ほとんど混ざったまま。引っ越しはすぐ止まる
30〜40%はっきり2つに分かれる(最も“意外”な領域)
50〜60%大きな塊に分離。境界がくっきり
70%〜満足できる場所が見つからず、引っ越しが止まらない

なぜ「弱い好み」が「強い分断」になるのか

不満な人が1人引っ越すと、元いた場所の周りは同類が減り、引っ越し先の周りは同類が増えます。つまり1回の引っ越しが、近所の別の人の不満を生み、連鎖します。個人の判断は小さくても、相互作用が増幅するため、結果は誰も望んでいない分断になります。シェリングはこの研究を含む業績で2005年にノーベル経済学賞を受賞しました。

よくある質問

差別の話ですか?
むしろ逆で、強い差別意識がなくても分離が起きうることを示すモデルです。
データは送信されますか?
いいえ。すべてブラウザ内で動作します。
現実の街でも同じことが起きている?
アメリカの都市の人種別居住分布や、SNSでの意見の分極(フィルターバブル)を説明するモデルとしてよく引用されます。「本人の意図」と「全体の結果」が一致しないことを示す代表例です。
分断を防ぐには?
モデル上では、空き地を増やす/満足ラインを下げる/「同類が多すぎても不満」という条件を足す、などで混合状態が保たれます。現実の都市政策でもこうした示唆が議論されています。

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