理科の授業向け

金星の満ち欠けと見え方シミュレーター(明けの明星・よいの明星)

金星は地球より内側を回る惑星で、太陽の光が当たった半分が光っています。左の「宇宙(北極の上)から見た図」で金星や地球を指で動かすか、日付を進めると、右に地球から見た空と金星の形・大きさが出ます。最初は今日の金星(実際の位置)を表示しています。

🔬 中3 月や金星の運動と見え方
太陽からの離角
—
見え方
—
光っている部分
—
見かけの大きさ
—

左:北極の上から見た太陽・金星・地球(大きさは誇張、軌道は円で表示)。赤い点が地上の観察者、白い線がその地平線で、暗い側は地平線の下(見えない側)です。右上:地上から見た空。右下:地球から見た金星の形と大きさ(同じ倍率。見かけの大きさは、いちばん遠い外合のころを1とした倍率)。金星や地球を指でドラッグすると、円軌道のモデルで自由に動かせます。

このシミュレーションでわかること

金星は、地球より内側(太陽から約0.72天文単位)を約225日で公転している惑星です。月と同じように自分では光らず、太陽の光が当たっている半分だけが光っています。地球から見ると、金星はいつも太陽の近く(はなれても約47°まで)にあるので、夕方の西の空(よいの明星)か明け方の東の空(明けの明星)にしか見えず、真夜中には見えません。

また、金星と地球の距離は約0.27〜1.73天文単位の間で大きく変わります。そのため金星は、地球に近いときほど大きく、細く欠けて見え、遠いときほど小さく、丸く見えます。このシミュレーターでは、宇宙から見た位置関係と、地球から見た形・大きさ・見える空を並べて確かめられます。

学年単元学習指導要領(平成29年告示)の内容
中学校3年第2分野(6)地球と宇宙(イ)太陽系と恒星「月や金星の運動と見え方」金星の観測資料などを基に、金星の公転と見え方を関連付けて理解すること。内容の取扱いで「金星の運動と満ち欠けや見かけの大きさを扱うこと」とされている

中学校学習指導要領解説(理科編)では、地球から見える金星の形の変化を調べるモデル実験を例に挙げ、太陽・金星・地球を俯瞰するような視点と、地球からの視点とで考えさせることが大切だとしています(解説 p.108)。左の図が俯瞰する視点、右の図が地球からの視点にあたります。

授業での使い方

導入:金星の写真(観測資料)を見せて、「同じ金星なのに、形と大きさがちがうのはなぜ?」と問いかけます。シミュレーターは最初に今日の金星を表示しているので、いまの金星が太陽のどちら側にあり、夕方と明け方のどちらの空に見えるかも確かめます。

展開(モデル実験):左の図の地球は動かさずに、金星を指で動かして軌道を1周させます。金星を「外合」「東方最大離角」「内合」「西方最大離角」などの位置に置いて、右下の形と大きさを記録させます。光っている半分(太陽側)と、地球に向いている半分(水色の線の側)の重なりで、形を説明させます。

展開(見える時刻):「地上から見る時刻」を夕方・明け方・真夜中に切り替えて、地上の観察者の地平線(左の図の白い線)より空の側に金星があるかを確かめます。

まとめ:「今日の金星」にもどして「▶ 日付を進める」を押し、金星がよいの明星 →(内合)→ 明けの明星 →(外合)→ よいの明星と変わることと、ひとめぐりに約584日(約1年7か月)かかることを確かめます。

生徒への問いの例です。

しくみ・解説

形と大きさが変わるわけ

太陽の光は、いつも金星の太陽側の半分を照らしています。地球から見えるのは、地球に向いている半分です。この2つの「半分」の重なり方が、金星の位置によって変わります。さらに、金星は地球との距離が大きく変わるので、見かけの大きさも変わります。

金星の位置地球からの距離(天文単位)形(光っている部分)見かけの大きさ(外合のころ=1)見え方
外合(太陽の向こう側)約1.72丸い(100%)1倍太陽と同じ方向で見えない
東方最大離角約0.69半月形(50%)約2.5倍夕方の西の空(よいの明星)。太陽からいちばんはなれる
内合の約30日前約0.39三日月形(約20%)約4.4倍夕方の西の空。大きく、細い
内合(太陽と地球の間)約0.28見えない(0%)約6.2倍太陽と同じ方向で見えない
内合の約30日後約0.39三日月形(約20%)約4.4倍明け方の東の空
西方最大離角約0.69半月形(50%)約2.5倍明け方の東の空(明けの明星)。太陽からいちばんはなれる

表の数値は、金星の軌道を半径0.72天文単位、地球の軌道を半径1天文単位の円として計算したものです。見かけの大きさは地球からの距離に反比例するので、内合のころは外合のころの約6倍になります。実際の大きさ(視直径)は、内合のころで約1分角(60秒角)、外合のころで約10秒角です。肉眼では点にしか見えず、形がわかるのは双眼鏡や望遠鏡で見たときです。

ポイント:月の満ち欠けとのちがい:月は地球からの距離がほとんど変わらないので、形が変わっても大きさはほぼ同じです。金星は地球からの距離が約6倍も変わるので、形とともに大きさも変わります。また、満月は真夜中にも見られますが、金星が丸く見えるころ(外合のころ)は太陽の向こう側にあって見えません。

離角と、真夜中に見えないわけ

地球から見た太陽と金星の間の角度を離角といいます。金星の軌道は地球の軌道の内側にあるので、離角には上限があります。左の図で、地球から金星の軌道に接する線(点線)を引いたとき、金星と太陽を結ぶ線と、地球から金星を見る線が直角になり、離角がいちばん大きくなります(最大離角)。軌道を円として作図すると約46°で、実際は軌道がわずかに楕円のため45〜47°です(国立天文台の2025〜2030年の値で45°47′〜47°10′)。

地球は1日に1回自転しているので、地上の観察者の地平線の向きは時刻によって変わります。夕方の観察者の地平線は太陽の方向にそって引かれ、そのとき太陽の東側にある金星が地平線の上に見えます(よいの明星)。明け方は反対に、太陽の西側にある金星が見えます(明けの明星)。真夜中の観察者は太陽と反対側の空を見ているので、太陽から約47°以内にしか来ない金星は、いつも地平線の下にあります。

地球から見た金星の位置見える空呼び名
太陽の東側日の入り後の西の空。太陽を追いかけるようにしずむ(最大離角のころで日の入りの約3時間後まで)よいの明星
太陽の西側日の出前の東の空。太陽より先にのぼる明けの明星
太陽とほぼ同じ方向(内合・外合のころ)太陽の光にまぎれて見えない―

会合周期(同じ位置関係にもどるまで)

金星は225日、地球は365日で太陽のまわりを1周するので、1日に金星は約1.60°、地球は約0.99°進みます。金星が地球より1周(360°)多く進むと、太陽・金星・地球が同じ位置関係にもどります。

会合周期 = 360° ÷(1.602° − 0.986°)≒ 584日(約1年7か月)

この584日の間に、外合 →(約220日)→ 東方最大離角 →(約70日)→ 内合 →(約70日)→ 西方最大離角 →(約220日)→ 外合と進みます。国立天文台の値でも、2026年1月7日の外合から8月15日の東方最大離角まで220日、10月24日の内合まで70日でした。

今日の金星(計算のしかたと国立天文台との比較)

「今日の金星」や日付のスライダーで動かすときは、金星と地球の軌道がわずかに楕円であることや、金星の軌道の傾き(約3.4°)もふくめて、NASAジェット推進研究所(JPL)が公開している軌道の近似式で位置を計算しています。国立天文台 暦計算室の値と比べた結果は次のとおりです(日本時間)。

現象国立天文台(暦計算室「天象」)このシミュレーターの計算
外合2026年1月7日 1時36分1月7日 1時41分
東方最大離角2026年8月15日 15時ごろ(45°53′)8月15日 14時52分(45°53′)
内合2026年10月24日 12時44分10月24日 12時37分
西方最大離角2027年1月4日 3時ごろ(46°57′)1月4日 3時47分(46°57′)
外合2027年8月12日 9時21分8月12日 9時20分
東方最大離角2028年3月22日 21時ごろ(46°07′)3月22日 22時35分(46°07′)
内合2028年6月1日 19時00分6月1日 19時03分

2024〜2030年の内合・外合・最大離角の17回で、日付はすべて一致しました。時刻のずれは外合・内合で16分以内、最大離角で1時間35分以内(国立天文台は最大離角の時刻を1時間単位で発表しています)、最大離角の角度のずれは1′以内でした。金星の位置は、光が地球に届くまでの時間(2〜14分)だけ前の位置にしています(国立天文台の値も、この見かけの位置で計算されています)。シミュレーターの日付は日本時間の正午の位置で、「位置をえらぶ」で選べるのは、その現象に最も近い正午の日付です。

金星や地球を指で動かしたときは、軌道を円(金星0.72天文単位・225日、地球1天文単位・365日)として計算します。この円軌道だけで日付を計算すると、同じ17回で最大4日ほどずれ、最大離角はいつも約46°になります。

同じ離角でも、季節で見える高さが変わる

右上の空は、日付で動かすときは東京で日の入りの30分後(日の出の30分前)の、実際の金星の高さと方角です。この時刻に高さが5°以上あるときを「見える」としています(目安)。同じ離角でも、季節によって見える高さは変わります。たとえば2026年10月4日の金星は太陽の東に約28°はなれていますが、秋の夕方は金星の通り道が地平線に対して低く、金星が太陽より南側にあるため、東京で日の入りの30分後の高さは約1°しかありません。この目安では、2026年は9月27日ごろから11月2日ごろまで見えない時期になります。国立天文台の「ほしぞら情報」でも、2026年の金星は9月には日の入り後の西の低空に見え、10月24日の内合のあとは日の出前の東の空に移ると案内されています。

金星や地球を指で動かしたときの空は、金星と太陽が春分・秋分のころの太陽と同じ通り道(真東からのぼり真西にしずむ。北緯35°)を通るとして描いています。このときは、離角が約14°以上あれば「見える」になります。

このシミュレーションで単純化していること

参考

引用・転載について

本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。

推奨クレジット表記:出典:シミュラボ「金星の満ち欠けと見え方シミュレーター(明けの明星・よいの明星)」 https://shimulabo.com/sims/kinsei-michikake/

よくある質問

金星が真夜中に見えないのはなぜですか?
金星は地球より内側を公転しているので、地球から見ると、いつも太陽から約47°以内の方向にあります。真夜中に見えるのは太陽と反対側の空なので、太陽の近くにある金星は地平線の下にあり、見ることができません。
明けの明星とよいの明星は、別の星ですか?
どちらも金星です。地球から見て金星が太陽の西側にあるときは、太陽より先にのぼるので明け方の東の空に見え(明けの明星)、東側にあるときは、太陽より後にしずむので夕方の西の空に見えます(よいの明星)。
金星はなぜ満ち欠けして、大きさも変わるのですか?
金星は太陽の光を反射して光っていて、地球に向いている面のうち光っている部分の割合が、太陽・金星・地球の位置関係で変わるからです。さらに地球との距離が約0.27〜1.73天文単位の間で変わるので、近いときは大きく細く、遠いときは小さく丸く見えます。
金星がいちばん明るく見えるのはいつですか?
内合の約1か月前と約1か月後で、「最大光度」といいます。このころの金星は光っている部分が約25%の三日月形ですが、地球に近く大きく見えるため、いちばん明るくなります。2026年は9月19日(夕方の西の空)と11月30日(明け方の東の空)です(国立天文台)。
次に明けの明星・よいの明星が見やすくなるのはいつですか?
国立天文台によると、金星は2026年10月24日に内合となり、そのあとは明け方の東の空に見えるようになります。2027年1月4日に西方最大離角(明けの明星として太陽からいちばんはなれる)、2028年3月22日に東方最大離角(よいの明星として太陽からいちばんはなれる)となります。
月の満ち欠けと金星の満ち欠けは、何がちがいますか?
月は地球からの距離がほとんど変わらないので、形が変わっても大きさはほぼ同じです。金星は地球との距離が大きく変わるので、形とともに見かけの大きさも約6倍変わります。また、満月は真夜中にも見られますが、金星が丸く見えるころ(外合)は太陽の向こう側にあるため見えません。

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