このシミュレーションでわかること
月食は、満月のころに太陽・地球・月がこの順に一直線に並び、月が地球の影に入る現象です。日食は、新月のころに太陽・月・地球がこの順に並び、月が太陽をかくす(月の影が地球に落ちる)現象です。
月の通り道は、地球の公転面(太陽と地球を通る面)に対して約5°かたむいています。そのため、ふだんの満月・新月では月が影の上か下を通り、食は毎月は起こりません。このシミュレーターでは、満月・新月のときの月の上下の「ずれ」を動かして、食が起こる条件を確かめられます。
| 学年 | 単元 | 扱い |
|---|---|---|
| 中学校3年 | 第2分野(6)地球と宇宙「月や金星の運動と見え方」 | 内容の取扱いに「日食や月食にも触れること」とある |
| 小学校6年 | B(5) 月と太陽(発展) | 月の形の見え方と、太陽と月の位置関係を学んだあとの発展として |
月の通り道の傾き(約5°)や食の種類のくわしい区別は、学習指導要領の範囲をこえる発展的な内容です。
授業での使い方
導入:「満月は毎月あるのに、月食がめったに起きないのはなぜ?」と問いかけ、予想を出させます。そのあと「一直線にそろえる(ずれ0)」を押し、ずれがなければ満月のたびに月食が起こることを確かめます。
展開:「月の通り道のずれ」を少しずつ大きくして、皆既月食→部分月食→半影月食→起きない、と変わる境目を記録させます。「新月のころ(日食)」に切り替えて同じことをし、「月までの距離」を変えて皆既日食と金環日食のちがいも確かめます。
まとめ:「1年分を試す」で、12か月分の新月・満月のうち何回食が起きたかを数えます。食は年に2回ほどの時期にまとまって起こることに気づかせます。
児童・生徒への問いの例です。
- 月食が起こるのは、月がどんな形のときでしょう。それはなぜでしょう。(満月。太陽・地球・月の順に並ぶと、月は太陽と反対側にあるから)
- 皆既月食の月が真っ黒にならず、赤黒く見えるのはなぜでしょう。(地球の大気を通った赤い光が曲げられて、影の中の月を照らすから)
- 皆既日食と金環日食のちがいは、何で決まるでしょう。(月までの距離。近いと月が太陽より大きく見えて皆既日食、遠いと小さく見えて金環日食)
しくみ・解説
月食と日食のちがい
| 月食 | 日食 | |
|---|---|---|
| 並び方 | 太陽-地球-月 | 太陽-月-地球 |
| 月の形 | 満月のころ | 新月のころ |
| 何の影? | 地球の影に月が入る | 月の影が地球に落ちる |
| 見られる場所 | 月が見える場所なら、どこでも同じように見える | 月の影が通る、限られた場所だけ |
| 種類 | 皆既月食・部分月食・半影月食 | 皆既日食・金環日食・部分日食 |
| 続く時間 | 欠け始めから終わりまで長いと4時間近く。皆既は長いと1時間40分ほど | 1か所で部分食が2〜3時間ほど。皆既・金環は数分 |
「食分」は、月(日食では太陽)の直径のどれだけが欠けたかを表す数です。月食で1以上なら皆既月食です。
なぜ毎月は起きない?(月の通り道の傾き)
月の通り道は、地球の公転面に対して約5.1°かたむいています。満月・新月のときに、月が公転面の近く(通り道が公転面と交わる「交点」の近く)にいるときだけ食が起こります。食が起こる「ずれ」の大きさは次のとおりです(月までの距離が平均のとき)。
| 起こる食 | 満月・新月のときの上下のずれ |
|---|---|
| 皆既月食 | 約0.44°以内 |
| 部分月食(本影に入る月食) | 約0.96°以内 |
| 半影月食(目ではほとんど気づかない) | 約1.49°以内 |
| 日食(地球のどこかで部分日食) | 約1.47°以内 |
| 皆既日食・金環日食(地球のどこかで) | 約0.95°以内 |
| 起きない | それより大きいとき(最大で約5.1°) |
月の直径は約0.5°なので、ずれが「月3個分」より大きいと食は起こりません。交点の近くで満月・新月になる時期は約半年ごとにめぐってくるので、食は年に2回ほどの時期にまとまって起こります。国立天文台の暦Wikiでは、満月が交点の両側約17°以内なら半影月食、約11°以内なら部分月食、約6°以内なら皆既月食が起こるとされています。
影の大きさと、太陽・月の見かけの大きさ
月の位置での地球の本影(こい影)は、月の直径の約2.7倍(月までの距離によって約2.6〜2.8倍)の大きさです。月はこの影の中を1時間に月の直径くらいずつ進みます。2026年3月3日の皆既月食では、部分食の始まりが18時50分、皆既が20時04分〜21時03分、部分食の終わりが22時18分でした(国立天文台)。
太陽の直径は月の約400倍ですが、地球からの距離も約390倍遠いので、空では太陽と月がほぼ同じ大きさ(約0.5°)に見えます。月までの距離は約36万〜41万kmの間で変わるので、近いときは月が太陽より大きく見えて皆既日食に、遠いときは小さく見えて金環日食になります。
| 月までの距離 | 月の見かけの直径 | 中心が重なったときの日食 |
|---|---|---|
| 近いとき(約36万km) | 約0.56° | 太陽より大きい → 皆既日食 |
| 平均(約38万km) | 約0.52° | 太陽よりわずかに小さい → 金環日食 |
| 遠いとき(約41万km) | 約0.49° | 太陽より小さい → 金環日食 |
| 太陽(平均) | 約0.53° | (くらべる基準) |
皆既月食の月が赤く見えるわけ
地球には大気があります。太陽の光が大気を通るとき、青い光は散らばって通りにくく、赤い光は通りぬけやすいうえ、大気がレンズのように光を曲げて本影の内側に届けます。このかすかな赤い光が月を照らすので、皆既食中の月は赤銅色(しゃくどういろ)に見えます(国立天文台「月食とは」より要約)。
次に日本で見られる月食・日食(国立天文台による)
| 日付 | 種類 | 日本での見え方 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2028年7月7日 | 部分月食 | 日本で見られる(欠けたまま月がしずむ「月入帯食」) | 国立天文台「月食一覧」 |
| 2029年1月1日 | 皆既月食 | 日本全国で見られる(0時7分に欠け始める) | 国立天文台「皆既月食(2026年3月)」 |
| 2030年6月1日 | 金環日食 | 北海道の大部分で金環食、全国で部分食 | 国立天文台「2023年4月20日 日食 解説資料」 |
| 2035年9月2日 | 皆既日食 | 日本で皆既日食(中心食)が見られる | 国立天文台「日食一覧」 |
2026年10月4日に国立天文台のページで確認しました。日付は食が最大になるときの日本時間です。国立天文台の月食一覧には半影月食は載っていません。地域ごとの時刻や見え方は、国立天文台暦計算室の「月食各地予報」「日食各地予報」で調べられます。
日食を観察するときの注意
このシミュレーションで単純化していること
- 上の図は、太陽・地球・月の大きさの比をほぼ実際どおりにし、距離と月の通り道の傾きを誇張しています。実際の月までの距離は地球の直径の約30倍です。
- 「ずれ」は、満月・新月の瞬間に月が地球の公転面からどれだけ上下にはなれているかを、地球の中心から見た角度で表したものです。影を横切る間に通り道がわずかに傾く効果は省いています。
- 影の大きさ、食が起こる条件、食分、続く時間は、J. Meeus『Astronomical Algorithms』の食の計算式(大気による影の広がりをふくむ)で計算しています。この条件で、国立天文台の月食一覧・日食一覧に載っている2025〜2030年の月食10回・日食14回の種類(皆既・部分・金環)を判定すると、すべて一致しました(半影月食は一覧に載っていないため除いています)。
- 日食の「地上から見た様子」は、月の影の中心にいちばん近い場所から見た場合です。実際の見え方や続く時間は場所によってちがいます。
- 「1年分を試す」は、満月・新月のたびに月の通り道の向きが太陽に対して約31°ずつずれていくとして計算しています。
参考
- 国立天文台「月食とは」(https://www.nao.ac.jp/astro/basic/lunar-eclipse.html)
- 国立天文台「日食とは」(https://www.nao.ac.jp/astro/basic/solar-eclipse.html)
- 国立天文台「月食一覧」(https://www.nao.ac.jp/astro/basic/lunar-eclipse-list.html)
- 国立天文台「日食一覧」(https://www.nao.ac.jp/astro/basic/solar-eclipse-list.html)
- 国立天文台「皆既月食(2026年3月)」(https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2026/03-topics02.html)
- 国立天文台「2023年4月20日 日食(金環皆既日食)解説資料」(https://www.nao.ac.jp/contents/astro/sky/2023/04/partial-eclipse-factsheet.pdf)
- 国立天文台「日食 観察のしかた」(https://www.nao.ac.jp/astro/basic/solar-eclipse-obs.html)
- 国立天文台 暦計算室「暦Wiki 月食の条件」(https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B7EEBFA92FBEF2B7EF.html)
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」理科(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm)
- Jean Meeus『Astronomical Algorithms』第2版(Willmann-Bell, 1998)
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「月食・日食シミュレーター(起こるしくみと、毎月は起きない理由)」 https://shimulabo.com/sims/gesshoku-nisshoku/よくある質問
- 満月のたびに月食が起きないのはなぜですか?
- 月の通り道が、地球の公転面に対して約5°かたむいているからです。ふだんの満月は、地球の影の上か下を通ります。満月が、通り道と公転面の交わる点(交点)の近くで起こるときだけ、月食になります。
- 皆既月食で月が赤く見えるのはなぜですか?
- 地球の大気を通った太陽の光のうち、赤い光が曲げられて地球の影の中に届き、月を照らすからです。大気中のちりの量によって、明るいオレンジ色から黒っぽい色まで変わります。
- 皆既日食と金環日食は何がちがうのですか?
- 月までの距離のちがいです。月が近いと太陽より大きく見えて太陽を全部かくし(皆既日食)、遠いと小さく見えて太陽がリングのようにはみ出します(金環日食)。
- 日食と月食はどちらが多いのですか?
- 地球全体で数えると、半影月食もふくめればほぼ同じ回数で、どちらも平均すると年に2回あまりです。ただし日食は見られる場所が限られるので、決まった場所で見られる回数は月食のほうが多くなります(国立天文台 暦Wikiより)。
- 次に日本で見られる月食・日食はいつですか?
- 国立天文台によると、月食は2028年7月7日の部分月食、日本全国で見られる皆既月食は2029年1月1日です。日食は2030年6月1日の金環日食(北海道の大部分で金環食、全国で部分食)です。
- 日食はどうやって観察すればよいですか?
- 太陽を肉眼で直接見たり、下じきやサングラスで見たりしてはいけません。日食グラスを正しく使う、ピンホールで太陽の像を映すなど、安全な方法で観察してください。