理科の授業向け

地震の伝わり方シミュレーター(P波・S波・初期微動継続時間)

震央をドラッグして地震を起こすと、P波(青)とS波(赤)が同心円状に広がり、5つの観測点の地震計に初期微動と主要動が記録されます。初期微動継続時間が震源からの距離に比例することを、グラフと計算で確かめられます。

🔬 中1 火山と地震(地震の伝わり方)
A地点の震源距離
—
P波の到着時刻
—
S波の到着時刻
—
初期微動継続時間
—

地図の×=震央(指やペンでドラッグすると動かせます)、▲=観測点(タップで選べます。青=P波が到着、赤=S波が到着)。下の地震計の記録は震源に近い順に並べ、時刻はすべて地震が発生した瞬間を0秒としています。緊急地震速報を表示すると、紫の点線の円(速報が出た瞬間のS波の位置)の内側では速報が間に合いません。地図と観測点は説明のための架空のもので、地下の波の速さは一定としています。

このシミュレーションでわかること

地震が起きると、震源から速いP波と遅いS波が同時に出て、ほぼ同心円状に広がります。P波が届くと小さな揺れ(初期微動)、S波が届くと大きな揺れ(主要動)が始まり、その時間の差(初期微動継続時間)は震源からの距離に比例します。震源からの距離は「P波の速さ×S波の速さ÷(P波の速さ−S波の速さ)×初期微動継続時間」で求められます。

対応する単元は、中学校学習指導要領 理科 第2分野(2)「大地の成り立ちと変化」の「火山と地震」(地震の伝わり方と地球内部の働き)で、主に中学1年で学習します。

授業での使い方

生徒への問いの例:

  1. 震源からの距離が2倍になると、初期微動継続時間は何倍になるでしょうか。
  2. S波の速さだけを速くして、P波の速さに近づけると、同じ地点の初期微動継続時間は長くなるでしょうか、短くなるでしょうか。
  3. 緊急地震速報が、震源の近くでは強い揺れに間に合わないことがあるのはなぜでしょうか。

しくみ・解説

P波とS波

地震は、地下の岩盤がずれ動くことで起こります。最初にずれ動いた場所が震源、その真上の地表の地点が震央です。震源からは、伝わる速さのちがう2種類の波が同時に出ます。

波伝わる速さ起こす揺れ揺れ方
P波(Primary wave)速い(気象庁の説明では秒速約7km)初期微動(小さな揺れ)波の進む向きに揺れる縦波
S波(Secondary wave)おそい(同じく秒速約4km)主要動(大きな揺れ)進む向きと垂直に揺れる横波

速さは地下の岩石の種類や深さによって変わります。このシミュレーターの初期値(P波6km/秒・S波3.5km/秒)は計算しやすい典型的な値で、スライダーで教科書や問題集の例題の値に合わせられます。

初期微動継続時間と震源からの距離

震源からの距離をD[km]、P波の速さをVp、S波の速さをVs[km/秒]とすると、P波が届くまでの時間はD÷Vp、S波が届くまでの時間はD÷Vs[秒]です。初期微動継続時間はその差なので、次のようになります。

初期微動継続時間 = D÷Vs − D÷Vp
震源距離 D = Vp×Vs÷(Vp−Vs)× 初期微動継続時間

初期微動継続時間は距離に比例します。P波6km/秒・S波3.5km/秒なら、6×3.5÷(6−3.5)=8.4なので「震源距離=8.4×初期微動継続時間」です。この関係は1899年に大森房吉が示したもので「大森公式」とよばれ、係数はふつう6〜8km/秒程度です。

このシミュレーターでは震源の深さも変えられます。比例の式で使うのは震央からではなく震源からの距離(震源距離)です。震源距離は、震央から観測点までの距離と震源の深さから、三平方の定理(中学3年の数学)で求めています。

計算問題の解き方(例題)

例題1 P波の速さを6km/秒、S波の速さを3.5km/秒とします。ある地点の初期微動継続時間が15秒でした。震源からの距離は何kmですか。
→ 距離をx kmとすると、x÷3.5−x÷6=15。通分すると2.5x÷21=15なので、x=126。(式にあてはめても 8.4×15=126) 答え 126km

例題2 震源からの距離が84kmの地点で、初期微動継続時間は10秒でした。初期微動継続時間が25秒の地点は、震源から何kmですか。
→ 初期微動継続時間は距離に比例するので、84×25÷10=210。 答え 210km

例題3 震源からの距離が42kmのA地点には10時15分27秒に、126kmのB地点には10時15分41秒にP波が届きました。(1)P波の速さ、(2)地震が発生した時刻、(3)S波の速さが3.5km/秒のときのA地点の初期微動継続時間を求めなさい。
→ (1)距離の差÷時間の差=(126−42)÷(41−27)=84÷14=6km/秒
→ (2)A地点までP波は42÷6=7秒かかるので、27秒−7秒=20秒。発生時刻は10時15分20秒
→ (3)S波はA地点まで42÷3.5=12秒かかるので、10時15分32秒に到着。32−27=5秒

例題4(発展) 震源から21kmの地点の地震計にP波が届いた5秒後に、緊急地震速報が出されました。震源から105kmのC市では、速報を受けてから何秒後に主要動が始まりますか。P波は6km/秒、S波は3.5km/秒とします。
→ P波が21kmの地点に届くのは地震発生の21÷6=3.5秒後なので、速報は3.5+5=8.5秒後。S波がC市に届くのは105÷3.5=30秒後。30−8.5=21.5。 答え 21.5秒後

ポイント:初期値のまま(P波6km/秒・S波3.5km/秒・深さ10km・震央は左下)で地震を起こすと、A〜E地点の震源距離は約84・126・168・210・252km、初期微動継続時間は10・15・20・25・30秒になります。グラフの点が原点を通る1本の直線にのることを確かめてください。

初期微動継続時間から震源距離を求める早見表

初期微動継続時間P波6・S波3.5 km/秒
(係数8.4)
P波7・S波4 km/秒
(係数約9.3)
P波8・S波4 km/秒
(係数8.0)
P波6・S波3 km/秒
(係数6.0)
1秒8.4 km9.3 km8.0 km6.0 km
2秒16.8 km18.7 km16.0 km12.0 km
5秒42.0 km46.7 km40.0 km30.0 km
10秒84.0 km93.3 km80.0 km60.0 km
15秒126.0 km140.0 km120.0 km90.0 km
20秒168.0 km186.7 km160.0 km120.0 km
30秒252.0 km280.0 km240.0 km180.0 km

緊急地震速報のしくみ(発展)

気象庁の緊急地震速報は、震源に近い地震計でP波をとらえ、震源の位置や地震の規模、各地の震度をすぐに計算して、S波(主要動)が届く前に知らせるしくみです。地震波よりも、通信で送る情報のほうがはるかに速く伝わることを利用しています。ただし解析と伝達には数秒かかるため、震源に近い場所では、速報が強い揺れに間に合わないことがあります。

シミュレーターで「表示する」を選ぶと、いちばん近い観測点にP波が届いた5秒後に速報が出ると仮定して、そのときS波が届いている範囲(紫の点線の円の内側=間に合わない範囲)と、各観測点で速報からS波が届くまでの時間(猶予)を表示します。

このシミュレーターで単純化している点
・地下の波の速さは場所によらず一定とし、波は震源を中心とする球面(地表では同心円)で広がるとしています。実際は地下のつくりによって速さが変わるため、きれいな同心円にはなりません。
・地図と観測点は説明のための架空のものです。地震計の波形は見た目のためのモデルで、揺れの大きさや周期は実際の記録とは異なります(震源から遠いほど揺れが小さくなる傾向だけを表しています)。
・緊急地震速報は「いちばん近い観測点でP波をとらえて5秒後に発表」と単純化しています。実際に発表されるまでの時間は地震によって異なります。

参考

引用・転載について

本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。

推奨クレジット表記:出典:シミュラボ「地震の伝わり方シミュレーター(P波・S波・初期微動継続時間)」 https://shimulabo.com/sims/jishin-ha/

よくある質問

初期微動継続時間とは何ですか?
P波が届いてからS波が届くまでの時間で、その間は初期微動(小さな揺れ)が続きます。震源から遠いほど長くなり、震源からの距離にほぼ比例します。
初期微動継続時間から震源距離を求める式は?
震源距離=P波の速さ×S波の速さ÷(P波の速さ−S波の速さ)×初期微動継続時間 です。P波6km/秒・S波3.5km/秒なら係数は8.4なので、初期微動継続時間が10秒の地点は震源から84kmです。距離と時間は比例するので、ある地点のデータが分かっていれば、比を使っても求められます。
P波とS波のちがいは何ですか?
P波は速く伝わり、初期微動(カタカタという小さな揺れ)を起こします。S波はP波よりおそく伝わり、主要動(ユサユサという大きな揺れ)を起こします。P波は波の進む向きに揺れる縦波、S波は進む向きと垂直に揺れる横波です。
震源と震央のちがいは何ですか?
震源は地下で岩盤が最初にずれ動いた場所、震央は震源の真上にある地表の地点です。初期微動継続時間から求められるのは、震源からの距離(震源距離)です。
緊急地震速報は、なぜ大きな揺れの前に届くのですか?
震源に近い地震計で速いP波をとらえ、すぐに震源や揺れの大きさを計算して、おそいS波が届く前に通信で知らせるからです。ただし解析と伝達に数秒かかるため、震源に近い場所では間に合わないことがあります。
P波とS波の速さはいつも同じですか?
地下の岩石の種類や深さによって変わります。気象庁の説明ではP波は秒速約7km、S波は秒速約4kmです。問題集では「P波6km/秒・S波3km/秒」「P波8km/秒・S波4km/秒」のように計算しやすい値が使われることが多いので、スライダーをその値に合わせて確かめてください。

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