急ぐほど、遅くなる
非常時、一人ひとりが「速く出よう」とするほど、全体の避難はかえって遅くなることがあります。群衆研究では「faster-is-slower効果」として知られる現象です。出口の前で人同士が押し合うと、ちょうど砂時計の砂が詰まるようにアーチ状のつっかえができ、流れが断続的に止まってしまうのです。物理学者ヘルビングらが2000年に発表した避難パニックのシミュレーション研究で広く知られるようになりました。
このシミュの仕組み(ソーシャルフォースモデル)
一人ひとりを「出口へ向かう力」「他人と押し合う反発力」「壁からの反発力」を受ける粒子として毎フレーム計算しています。「焦り」スライダーは各自の希望速度を変えるもので、速いほど押し合いが強くなり、接触時の摩擦で流れが乱れます。実際の研究で使われるモデルの簡略版です。
一人ひとりを「出口へ向かう力」「他人と押し合う反発力」「壁からの反発力」を受ける粒子として毎フレーム計算しています。「焦り」スライダーは各自の希望速度を変えるもので、速いほど押し合いが強くなり、接触時の摩擦で流れが乱れます。実際の研究で使われるモデルの簡略版です。
実験してみよう
- 実験1:焦りを比べる……「落ち着き」でタイムを測ったあと、「パニック」にして再挑戦。出口の前にできる扇形の団子と、タイムの変化に注目してください。
- 実験2:出口の幅……幅を2倍にするとタイムは半分になるでしょうか? 実は詰まりが消えると、幅の効果は倍以上に効くことがあります。
- 実験3:同じ条件で2回……まったく同じ設定でも、タイムは毎回すこし違います。群衆の流れには偶然の詰まり(確率的なアーチ形成)が影響するためです。
「押さない・駆けない」は物理的に正しい
学校の避難訓練で習う「お・は・し(押さない・走らない・しゃべらない)」は、精神論ではなく群衆物理の知恵です。一人ひとりがすこし譲ると、出口のアーチが崩れて流れが途切れなくなり、全員が出るまでの時間はむしろ短くなります。また、興味深い研究として「出口の少し手前に柱などの障害物を置くと、押し合いが分散されて流れがスムーズになる場合がある」という報告もあり、群衆の流れの設計(クラウドマネジメント)は駅やスタジアムの設計で実際に使われています。
よくある質問
- 焦ると本当に避難が遅くなるの?
- 群衆シミュレーション研究で知られる現象です。押し合いで出口にアーチ状の詰まりができ、全体の流れが断続的に止まるためです。
- 実際の避難でも役に立つ?
- 「押さない・駆けない」という避難の基本は、この現象の裏返しです。ただし本シミュは簡略モデルの実験装置で、実際の避難計画は専門のシミュレーションと訓練に基づきます。
- タイムが毎回違うのはなぜ?
- 初期配置と押し合いの偶然で、詰まりの起き方が毎回変わるためです。現実の群衆にも同じゆらぎがあります。
- データは送信されますか?
- いいえ。計算はすべてブラウザ内で完結します。
参考
- Helbing, Farkas & Vicsek, "Simulating dynamical features of escape panic"(Nature, 2000)
- ソーシャルフォースモデル(Helbing & Molnár, 1995)