このシミュレーションでわかること
原子は、中心の原子核(陽子と中性子)と、そのまわりの電子殻(K殻・L殻・M殻・N殻)に入った電子からできています。原子番号1〜18の原子では、電子は内側の殻から順に K殻2個 → L殻8個 → M殻 と入り、19番のカリウムと20番のカルシウムでは、M殻が8個のところで次のN殻に入ります。最も外側の殻の電子(価電子)の数は周期表の族と対応し、原子がイオンになるときは、電子を失ったり受け取ったりして、最も近い貴ガスと同じ電子配置になります。
授業での使い方
導入:1番から順に電子を入れていく
「次 ▶」を押して、水素から順に原子番号を1つずつ増やします。電子が内側のK殻から入り、K殻が2個、L殻が8個でいっぱいになると次の殻に移ること、18番のアルゴンのあと19番のカリウムでN殻に入ることに気付かせます。周期表の下の段(周期)が変わるところで、新しい電子殻が使われ始めることも確かめます。
展開:族と価電子、イオンの生成
Li・Na・K(1族)、F・Cl(17族)、He・Ne・Ar(18族)を順に選び、同じ族では価電子の数が同じであることを周期表のいちばん下の行で確かめます。次にNaを選んで「⚡ イオンにする」を押すと、価電子1個が出ていき、Neと同じ電子配置のNa⁺になります。Clでは電子を1個受け取ってArと同じ電子配置のCl⁻になります。Mg・Al・O・Sでも試し、イオンの価数と族の関係を整理させます。
まとめ:同位体とイオン化エネルギー
Clを選んで「質量数(同位体)」を ³⁵Cl と ³⁷Cl で切り替えると、変わるのは中性子の数だけで、電子配置は変わらないことがわかります。「📈 イオン化エネルギー」を押すと、第一イオン化エネルギーが貴ガスで大きく、アルカリ金属で小さいという周期的な変化を棒グラフで確かめられます。
生徒への問いの例
- ナトリウム(Na)とカリウム(K)は、どちらも周期表の1族にある。電子配置をくらべると、何が共通しているだろう?
- マグネシウム原子は、電子を2個失ってMg²⁺になる。電子を6個受け取るのではなく、2個失うほうが起こりやすいのはなぜだろう?できたイオンはどの貴ガスと同じ電子配置だろう?
- 炭素12(¹²C)と炭素14(¹⁴C)で、数がちがうのは陽子・中性子・電子のどれだろう?化学的な性質はちがうだろうか?
しくみ・解説
用語
- 原子番号とは、原子核に含まれる陽子の数のことで、元素の種類はこの数で決まります。
- 質量数とは、原子核に含まれる陽子の数と中性子の数の和のことです。
- 同位体(アイソトープ)とは、原子番号が同じで中性子の数が異なるため、質量数が異なる原子どうしのことです。化学的な性質はほぼ同じです。
- 電子殻とは、原子核のまわりで電子が入るいくつかの層のことで、内側から K殻・L殻・M殻・N殻…とよびます。
- 電子配置とは、原子のもつ電子が、どの電子殻に何個ずつ入っているかを表したものです。
- 最外殻電子とは最も外側の電子殻に入っている電子のことで、そのうち原子がイオンになったり結合したりするときにはたらく電子を価電子といいます。貴ガスの価電子の数は0とします。
- 貴ガスとは18族の元素(He・Ne・Ar・Kr など)のことで、安定な電子配置をもつため、ほかの原子とほとんど反応せず、イオンにもなりにくい元素です。
- 閉殻とは、電子殻に入ることのできる最大数の電子が入った状態です(HeのK殻2個、NeのL殻8個)。ArのM殻は8個ですが、最外殻に8個の電子をもつ配置も閉殻と同じように安定です。
- (第一)イオン化エネルギーとは、原子から電子1個を取り去って1価の陽イオンにするのに必要なエネルギーのことです。小さい原子ほど陽イオンになりやすい原子です。
式と数値の早見表
| 量 | 式 |
|---|---|
| 原子番号 | = 陽子の数 = 原子の電子の数 |
| 質量数 | = 陽子の数 + 中性子の数 |
| 中性子の数 | = 質量数 − 原子番号 |
| n番目の電子殻の最大数 | 2n²(K殻 2、L殻 8、M殻 18、N殻 32) |
| イオンの電子の数 | = 原子番号 − イオンの価数(陽イオン)/ + 価数(陰イオン) |
| 粒子 | 質量 | 電荷 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 陽子 | 1.673×10⁻²⁷ kg | +1(+1.602×10⁻¹⁹ C) | 原子核の中 |
| 中性子 | 1.675×10⁻²⁷ kg | 0 | 原子核の中 |
| 電子 | 9.109×10⁻³¹ kg(陽子の約1/1840) | −1(−1.602×10⁻¹⁹ C) | 電子殻 |
原子の大きさは約10⁻¹⁰ m、原子核の大きさは約10⁻¹⁵〜10⁻¹⁴ m で、原子核は原子の10万分の1程度しかありません。このシミュレーターの図は、原子核をとても大きく描いています。
原子番号1〜20の電子配置
| 原子番号 | 記号 | 元素 | K | L | M | N | 価電子 | なりやすいイオン |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | H | 水素 | 1 | 1 | H⁺ | |||
| 2 | He | ヘリウム | 2 | 0 | (なりにくい) | |||
| 3 | Li | リチウム | 2 | 1 | 1 | Li⁺ | ||
| 4 | Be | ベリリウム | 2 | 2 | 2 | Be²⁺ | ||
| 5 | B | ホウ素 | 2 | 3 | 3 | (なりにくい) | ||
| 6 | C | 炭素 | 2 | 4 | 4 | (なりにくい) | ||
| 7 | N | 窒素 | 2 | 5 | 5 | N³⁻ | ||
| 8 | O | 酸素 | 2 | 6 | 6 | O²⁻ | ||
| 9 | F | フッ素 | 2 | 7 | 7 | F⁻ | ||
| 10 | Ne | ネオン | 2 | 8 | 0 | (なりにくい) | ||
| 11 | Na | ナトリウム | 2 | 8 | 1 | 1 | Na⁺ | |
| 12 | Mg | マグネシウム | 2 | 8 | 2 | 2 | Mg²⁺ | |
| 13 | Al | アルミニウム | 2 | 8 | 3 | 3 | Al³⁺ | |
| 14 | Si | ケイ素 | 2 | 8 | 4 | 4 | (なりにくい) | |
| 15 | P | リン | 2 | 8 | 5 | 5 | (なりにくい) | |
| 16 | S | 硫黄 | 2 | 8 | 6 | 6 | S²⁻ | |
| 17 | Cl | 塩素 | 2 | 8 | 7 | 7 | Cl⁻ | |
| 18 | Ar | アルゴン | 2 | 8 | 8 | 0 | (なりにくい) | |
| 19 | K | カリウム | 2 | 8 | 8 | 1 | 1 | K⁺ |
| 20 | Ca | カルシウム | 2 | 8 | 8 | 2 | 2 | Ca²⁺ |
族と価電子の早見表(典型元素)
| 族 | 価電子の数 | 元素の例 | イオン |
|---|---|---|---|
| 1族 | 1 | H, Li, Na, K | 1価の陽イオン(Li⁺, Na⁺, K⁺) |
| 2族 | 2 | Be, Mg, Ca | 2価の陽イオン(Mg²⁺, Ca²⁺) |
| 13族 | 3 | B, Al | Al³⁺ |
| 14族 | 4 | C, Si | イオンになりにくい |
| 15族 | 5 | N, P | (N³⁻) |
| 16族 | 6 | O, S | 2価の陰イオン(O²⁻, S²⁻) |
| 17族 | 7 | F, Cl | 1価の陰イオン(F⁻, Cl⁻) |
| 18族 | 0 | He, Ne, Ar | イオンになりにくい(貴ガス) |
周期の番号は、電子が入っている最も外側の電子殻の番号(1=K殻、2=L殻、3=M殻、4=N殻)と一致します。1族のうちHを除いた元素をアルカリ金属、2族元素をアルカリ土類金属、17族元素をハロゲン、18族元素を貴ガスといいます。
計算の例
- ²³Na の粒子の数:陽子 11個、中性子 23−11=12個、電子 11個。Na⁺ になると電子は 11−1=10個(Neと同じ K2 L8)。
- ³⁵Cl⁻ の粒子の数:陽子 17個、中性子 35−17=18個、電子 17+1=18個(Arと同じ K2 L8 M8)。
- 塩素の原子量:³⁵Cl(相対質量 35.0、存在比 75.8%)と ³⁷Cl(37.0、24.2%)から、35.0×0.758+37.0×0.242=35.48 → 約35.5。
19番・20番の電子がN殻に入る理由
M殻には最大18個の電子が入りますが、カリウムとカルシウムでは、M殻が8個になったところで次の電子がN殻に入ります。これは電子がエネルギーの低いところから順に入るためで、詳しくは「化学」以降で学ぶ電子軌道で説明されます。21番スカンジウムからの遷移元素では、N殻に2個(または1個)入ったままM殻の電子が増えていき(例:Fe は K2 L8 M14 N2)、29番の銅でM殻が18個になります。「表示する範囲」を「発展」にすると、21〜36番も確かめられます。
イオン化エネルギーの周期的な変化
| 貴ガス | 第一イオン化エネルギー[kJ/mol] | アルカリ金属 | 第一イオン化エネルギー[kJ/mol] |
|---|---|---|---|
| He | 2372 | Li | 520 |
| Ne | 2081 | Na | 496 |
| Ar | 1521 | K | 419 |
同じ周期では右へ行くほど大きくなる傾向があり、貴ガスで最大、次の周期のアルカリ金属で急に小さくなります。同じ族では、下へ行くほど(原子が大きくなり、最外殻電子が原子核から遠くなるため)小さくなります。
参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編」化学基礎(2)物質の構成
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」
- 日本化学会 原子量専門委員会「原子量表」/IUPAC「Isotopic compositions of the elements」(同位体の存在比)
- NIST Atomic Spectra Database「Ionization Energies」(第一イオン化エネルギー)
- 高等学校「化学基礎」の教科書「物質の構成粒子」「イオンとイオン結合」
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「原子の構造と電子配置のシミュレーター(周期表・価電子・イオン)」 https://shimulabo.com/sims/denshi-haichi/よくある質問
- 価電子と最外殻電子のちがいは?
- 最外殻電子は最も外側の電子殻に入っている電子のことです。価電子は、そのうちイオンになったり結合したりするときにはたらく電子で、典型元素では最外殻電子の数と同じです。ただし貴ガス(He・Ne・Arなど)は安定でほとんど反応しないので、価電子の数を0とします。
- K殻・L殻・M殻・N殻に入る電子の最大数は?
- 内側から n 番目の電子殻には最大 2n² 個の電子が入ります。K殻(n=1)は2個、L殻(n=2)は8個、M殻(n=3)は18個、N殻(n=4)は32個です。
- カリウムの電子配置は?M殻にまだ入るのに、なぜN殻に入るの?
- カリウム(原子番号19)の電子配置は K2 L8 M8 N1 です。M殻には最大18個入りますが、電子はエネルギーの低いところから順に入るため、M殻が8個になったところで19個目はN殻に入ります。カルシウムは K2 L8 M8 N2 です。
- イオンになると、なぜ貴ガスと同じ電子配置になるの?
- 貴ガスの電子配置(最外殻が2個または8個)は特に安定だからです。価電子が1〜3個の原子は電子を失って陽イオンに(Na→Na⁺はNeと同じ)、価電子が6〜7個の原子は電子を受け取って陰イオンに(Cl→Cl⁻はArと同じ)なりやすくなります。
- 同位体どうしで化学的な性質は変わる?
- ほとんど変わりません。同位体は中性子の数(質量数)だけがちがい、陽子と電子の数、つまり電子配置が同じだからです。ただし質量がちがうので、重水素(²H)を含む水が少し重いなど、物理的な性質にはわずかな差があります。
- 元素記号の左上と左下の数字は何?
- 左上が質量数(陽子の数+中性子の数)、左下が原子番号(陽子の数)です。たとえば ²³₁₁Na は、陽子11個・中性子12個のナトリウム原子を表します。