このシミュレーションでわかること
電流が流れる導線やコイルのまわりには磁界ができます。磁界の向きは電流の向きで決まり(右ねじの法則)、電流が大きいほど、導線に近いほど強くなります。コイルに鉄しんを入れた電磁石は、電流を大きくしたり巻き数を多くしたりすると強くなります。磁界の中の導線に電流を流すと力がはたらき、その向きは電流の向きと磁界の向きで決まります(フレミングの左手の法則)。この力でコイルを回し続けるのがモーターです。反対に、コイルの中の磁界を変化させるとコイルに電流が流れます(電磁誘導)。これを利用したのが発電機です。
授業での使い方
導入:見えない磁界を「見える」ようにする
中2では「① 電流がつくる磁界」で、実験の前に方位磁針の向きを予想させます。電流を0 Aから少しずつ大きくすると、方位磁針がそろって円をえがく向きに回っていく様子が見られます。「地球の磁界も入れる」を押すと、電流が小さいときや導線から遠い所では方位磁針が北を向こうとすることもわかり、実験で針が円の向きにそろわないときの理由の説明に使えます。小5では「② 電磁石の強さ」で、コイルに電流を流したときだけクリップがつくことを確かめます。
展開:条件を1つずつ変えて調べる
小5の電磁石では、まき数だけを変える(かん電池はそのまま)、かん電池の数だけを変える(まき数はそのまま)という比べ方をさせ、「📋 結果を記録」で表にまとめます。まき数を変えるときに導線の長さをそろえること(あまった導線は切らずにまとめておく)も画面に出しています。中2の「③ 電流が受ける力」では、電流の向き・磁界の向きを1つずつ反対にして力の向きを表にまとめさせ、モーターの画面で「整流子をはずす」を押して、整流子の役割を考えさせます。「④ 電磁誘導」では、磁石を指で出し入れして、検流計の針がふれるのは磁石が動いているときだけであることを確かめます。
まとめ:モーターと発電機をつなげる
モーターは「電流が磁界から受ける力」で回り、発電機は「コイルの中の磁界の変化」で電流をつくります。発電機の画面で、回す速さを変えると交流の向きの変わり方と大きさが変わることを確かめ、家庭のコンセントの交流(東日本50 Hz、西日本60 Hz)につなげてまとめます。
児童・生徒への問いの例
- 導線に下から上へ大きな電流を流したとき、導線の西側に置いた方位磁針のN極はどちらを向くでしょう。(中2 答え:南。上から見て反時計回りの磁界ができるため)
- 電磁石のまき数を2倍にして強さを比べるとき、導線の長さをそろえるのはなぜでしょう。(小5 答え:導線の長さが変わると流れる電流の大きさも変わり、まき数のちがいだけを比べられなくなるため)
- コイルに磁石のN極を入れたまま止めると、検流計の針はどうなるでしょう。そのあと引きぬくとどうなるでしょう。(中2 答え:止めると0にもどる。引きぬくと入れたときと反対にふれる)
しくみ・解説
電流がつくる磁界(右ねじの法則)
まっすぐな導線に電流を流すと、導線を中心とした同心円状の磁界ができます。右ねじを電流の向きに進めるとき、ねじを回す向きが磁界の向きです(右ねじの法則)。右手の親指を電流の向きに合わせたとき、残りの4本の指が曲がる向きが磁界の向き、と覚えることもできます。コイルでは、右手の4本の指を電流の向きに合わせてコイルをにぎると、親指の向きがコイルの中の磁界の向きになり、親指の側がN極です。コイルのまわりの磁界は棒磁石のまわりの磁界と同じ形になります。
| 磁力線の形 | 向きの決め方 | 磁界を強くするには | |
|---|---|---|---|
| まっすぐな導線 | 導線を中心とした同心円 | 右ねじの法則(ねじの進む向き=電流、回す向き=磁界) | 電流を大きくする・導線に近づく |
| コイル | 棒磁石と同じ形。コイルの中はほぼ平行 | 右手の4本の指=電流の向き、親指=N極の向き | 電流を大きくする・巻き数をふやす・鉄しんを入れる |
まっすぐな導線のまわりの磁界の強さは、電流に比例し、導線からの距離に反比例します(高校の物理で学ぶ式:B=μ0I÷2πr)。たとえば3 Aの電流から2 cm離れた所の磁界は約30 μT(マイクロテスラ)で、日本付近の地球の磁界の水平方向の強さ(約30 μT)と同じくらいです。電流が小さいときや導線から遠い所で方位磁針がうまく円の向きにそろわないのは、地球の磁界の影響を受けるからです。
| 電流 | 導線から1 cm | 導線から2 cm | 1 cmの所で、地球の磁界(約30 μT)の |
|---|---|---|---|
| 1 A | 20 μT | 10 μT | 約0.7倍 |
| 3 A | 60 μT | 30 μT | 約2倍 |
| 5 A | 100 μT | 50 μT | 約3.3倍 |
電磁石の強さ(小5)
電流が流れているコイルは、中に入れた鉄しんを磁石にします(電磁石)。電流の向きを反対にすると、N極とS極が入れかわります。電磁石の強さは、電流の大きさとコイルのまき数で変わります。比べるときは、変える条件を1つにして、ほかの条件はそろえます。まき数を変えるときも導線の全体の長さは同じにし、あまった導線は切らずにまとめておきます。
| まき数 | かん電池 | ついたクリップ(モデル) | 変えた条件 |
|---|---|---|---|
| 100回 | 1個(1.5 A) | 8こ | もとにする |
| 200回 | 1個(1.5 A) | 16こ | まき数を2倍 |
| 100回 | 2個の直列つなぎ(3.0 A) | 16こ | 電流を2倍 |
| 200回 | 2個の直列つなぎ(3.0 A) | 32こ | 両方2倍 |
表の数はこのシミュレーションのモデル(クリップの数がまき数×電流に比例するとした値)です。実際の実験では、鉄しんの太さやクリップのつき方で数がばらつくので、何回か調べて比べます。
磁界の中の電流が受ける力(フレミングの左手の法則)
U字形磁石の間に導線をつるし(電気ぶらんこ)、電流を流すと、導線は磁界から力を受けて動きます。電流の向きか磁界の向きのどちらか一方を反対にすると、力の向きも反対になります。両方を反対にすると、力の向きはもとと同じです。電流を大きくしたり、磁石を強くしたりすると、力は大きくなります。
| 電流の向き | 磁界の向き | 力の向き(このシミュレーターの図) |
|---|---|---|
| もとのまま | もとのまま | 磁石の外側へ |
| 反対 | もとのまま | 磁石の内側へ |
| もとのまま | 反対 | 磁石の内側へ |
| 反対 | 反対 | 磁石の外側へ |
電流・磁界・力の向きの関係は、左手の中指・人差し指・親指をたがいに直角に開いて、中指を電流、人差し指を磁界の向きに合わせたとき、親指が力の向きになる、とまとめられます。これをフレミングの左手の法則といい、中指から順に「電・磁・力」と覚えます。中学校では、電流や磁界の向きを変えたときに力の向きが変わることを実験で確かめます(この法則の名前は、教科書によっては発展として紹介されています。高校の物理で詳しく学びます)。
モーターが回るしくみ(整流子とブラシ)
磁界の中のコイルに電流を流すと、コイルの向かい合う2つの辺に反対向きの力がはたらき、コイルが回ります。ところが、コイルが半回転すると力の向きが回転をじゃまする向きになるため、そのままではコイルは行ったり来たりして止まってしまいます。そこでモーターには整流子とブラシがついていて、コイルが半回転するごとにコイルに流れる電流の向きを切りかえます。こうしてコイルはいつも同じ向きに回り続けます。
電磁誘導と発電機
コイルに磁石を出し入れすると、コイルの中の磁界が変化して、コイルに電圧が生じ電流が流れます。この現象を電磁誘導、流れる電流を誘導電流といいます。
| 操作 | 検流計の針(このシミュレーターの図) | コイルにできる磁界 |
|---|---|---|
| N極を入れる | 右(+) | コイルの左はしがN極(近づく磁石をしりぞける) |
| N極を出す | 左(-) | コイルの左はしがS極(遠ざかる磁石を引きとめる) |
| S極を入れる | 左(-) | コイルの左はしがS極 |
| S極を出す | 右(+) | コイルの左はしがN極 |
| 磁石を止める | 0(ふれない) | 磁界が変化しないので電流は流れない |
誘導電流は、磁石を速く動かすほど、磁石が強いほど、コイルの巻き数が多いほど大きくなります。誘導電流の向きが「磁石の動きをさまたげる向き」になること(レンツの法則)は、高校の物理で詳しく学びます。発電機は、磁石やコイルを回し続けることで電磁誘導を起こし続け、電流をつくります。回転するたびにコイルの中の磁界の向きが入れかわるので、電流の向きが周期的に変わる交流になります。
直流と交流
| 電流の向き | 例 | |
|---|---|---|
| 直流 | 向きが一定 | かん電池、光電池、スマートフォンの充電池 |
| 交流 | 向きと大きさが周期的に変わる | 家庭のコンセント(東日本50 Hz、西日本60 Hz)、発電所の発電機 |
1秒間に向きの変化をくり返す回数を周波数といい、単位はヘルツ(Hz)です。50 Hzの交流では、1秒間に電流の向きが100回入れかわります。発光ダイオード(LED)を2つ、向きを反対にしてつなぐと、交流では2つが交互に光ります。
このシミュレーションで単純化していること
- まっすぐな導線のまわりの磁界は B=μ0I÷2πr で計算しています。地球の磁界は、日本付近の水平方向の強さを約30 μT(北向き)としています(伏角や場所によるちがいは考えていません)。「地球の磁界も入れる」を押していないときは、地球の磁界をとても小さいとして、導線の磁界だけで方位磁針の向きを決めています。
- コイルの磁力線は、厚紙をつらぬく導線を長い直線電流の集まりとみなして計算した厚紙の面の磁界です。本数は電流の大きさに比例させていますが、強さは実際の値ではありません。
- 電磁石のクリップの数は、まき数×電流に比例するモデルです。かん電池1個の電流を1.5 A、2個の直列つなぎを3.0 Aとし、電池の中の抵抗は考えていません。鉄しんがないときは、鉄しんありの約6%の強さとしています。
- ぶらんこのふれの大きさ、モーターの回る速さ(電流に比例)、検流計の目もりはモデルの値です。モーターは、コイルが回ることで生じる電圧(逆起電力)を考えず、まさつで速さが決まるとしています。
- 電磁誘導は、棒磁石を両はしの磁極で表したモデルでコイルを通る磁界の量を計算し、その変化の速さに比例する電流としています。発電機は、磁界の量が回転の角度で正弦波状に変わるとしています。
- 見やすさのため、磁石・コイル・導線の大きさや位置関係は実際の実験装置とは変えています。
参考
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」第5学年 A(3)電流がつくる磁力 小学校学習指導要領解説
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」第1分野(3)電流とその利用(イ)電流と磁界 中学校学習指導要領解説
- 小学校理科の教科書(第5学年「電流がうみ出す力」「電磁石の性質」などの単元)、中学校理科の教科書(第2学年「電流と磁界」の単元)
- 国土地理院「磁気図」(日本付近の地磁気の水平分力)
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「電流と磁界シミュレーター(電磁石・モーター・発電機)」 https://shimulabo.com/sims/denryu-jikai/よくある質問
- 右ねじの法則とは何ですか?
- 電流がつくる磁界の向きを決めるきまりです。右ねじを電流の向きに進めるとき、ねじを回す向きが磁界の向きになります。まっすぐな導線のまわりには、導線を中心とした同心円状の磁界ができ、下から上へ流れる電流なら、上から見て反時計回りの向きです。
- フレミングの左手の法則の覚え方は?
- 左手の中指・人差し指・親指をたがいに直角に開き、中指を電流の向き、人差し指を磁界の向き(N極からS極)に合わせると、親指の向きが導線の受ける力の向きになります。中指から順に「電・磁・力」と覚えます。電流か磁界の一方を反対にすると力も反対向きになります。
- モーターの整流子は何のためにあるのですか?
- コイルが半回転するごとに、コイルに流れる電流の向きを切りかえるためです。切りかえないと、半回転したところで力が回転をじゃまする向きになり、コイルは行ったり来たりして止まってしまいます。整流子とブラシのおかげで、コイルは同じ向きに回り続けます。
- 誘導電流を大きくするにはどうすればよいですか?
- 磁石を速く動かす、強い磁石を使う、コイルの巻き数をふやす、のいずれかです。磁石を止めるとコイルの中の磁界が変化しないので、誘導電流は流れません。
- 電磁石を強くするにはどうすればよいですか?(小5)
- 電流を大きくする(かん電池を直列つなぎにする)か、コイルのまき数をふやします。比べるときは、変える条件を1つにして、導線の長さなどほかの条件はそろえます。電流の向きを反対にすると、電磁石のN極とS極が入れかわります。
- 直流と交流のちがいは何ですか?
- 直流は電流の向きが一定の電流(かん電池など)、交流は向きと大きさが周期的に変わる電流(家庭のコンセントなど)です。1秒間にくり返す回数を周波数といい、東日本は50 Hz、西日本は60 Hzです。発電機では、磁石やコイルを回すと交流が生じます。