このシミュレーションでわかること
丸い種子をつくる純系のエンドウ(AA)と、しわのある種子をつくる純系のエンドウ(aa)をかけ合わせると、子(Aa)はすべて丸い種子になります。子どうしをかけ合わせて(自家受粉)できる孫では、丸としわがおよそ3:1の割合で現れます。この比は、調べる数が少ないと大きくばらつき、数を増やすほど3:1に近づきます。
授業での使い方
導入:しわの種子はどこへ消えた?
親→子→孫の流れ(キャンバスの左上)を見せ、「子ではしわの種子が1つもないのに、孫で再び現れるのはなぜか」を問いかけます。
展開:モデル実験とくらべる
班ごとにコインやカードで交配のモデル実験(例:20回)を行い、結果を記録します。次に、このシミュレーターで孫の数を20個にして「🔁 10回くり返す」を押し、班ごとに結果がばらつくのは当たり前であることを確かめます。そのあと数を100、1,000、10,000と増やし、比が3:1に近づいていく様子をグラフで見ます。
まとめ:かけ合わせの表で説明する
かけ合わせの表を使って、AA:Aa:aa=1:2:1、丸:しわ=3:1になる理由を説明させます。種子をタップすると遺伝子の組み合わせが見られるので、「見た目が丸でもAAとAaがある」ことも確かめられます。表のマスをタップすると、その組み合わせの種子だけが表示されます。
生徒への問いの例
- 子(Aa)はすべて丸なのに、孫にしわの種子が現れるのはなぜだろう?
- 孫を20個だけ調べたら、丸が18個、しわが2個だった。3:1にならなかったのは、実験の失敗だろうか?
- 孫の丸い種子のうち、遺伝子の組み合わせがAaのものは、およそ何%だろう?
しくみ・解説
用語
- 形質・対立形質:生物の形や性質の特徴を形質といいます。種子の形の「丸」と「しわ」のように、どちらか一方しか現れない形質どうしを対立形質といいます。
- 顕性の形質・潜性の形質:対立形質をもつ純系どうしをかけ合わせたとき、子に現れる形質を顕性の形質(丸)、子に現れない形質を潜性の形質(しわ)といいます。以前は「優性」「劣性」と呼んでいましたが、形質が優れている・劣っているという意味ではないため、日本遺伝学会が2017年に言いかえを提案し、今の教科書では「顕性」「潜性」が使われています。
- 純系:自家受粉をくり返しても、親・子・孫と同じ形質が現れ続ける系統(AA や aa)です。
- 分離の法則:対になっている遺伝子は、生殖細胞(卵細胞・精細胞)がつくられるとき(減数分裂)に分かれて、別々の生殖細胞に入ります。
かけ合わせの表(子 Aa × 子 Aa → 孫)
| 卵細胞\精細胞 | A | a |
|---|---|---|
| A | AA(丸) | Aa(丸) |
| a | Aa(丸) | aa(しわ) |
卵細胞も精細胞も、Aをもつものとaをもつものが1:1の割合でつくられるので、4つのマスはどれも同じ確率(1/4)で起こります。そのため AA:Aa:aa=1:2:1。Aが1つでもあれば丸になるので、丸:しわ=(1+2):1=3:1です。丸い種子のうちAaは2/3(約67%)、AAは1/3です。
計算の例:孫の種子が800個できたとき、しわはおよそ800×1/4=200個、丸はおよそ600個です。丸600個のうち、AAはおよそ200個、Aaはおよそ400個です。
数が少ないと、なぜずれるのか
1つ1つの孫がどの組み合わせになるかは、コインを投げたときの表・裏のように偶然で決まります。そのため、調べる数が少ないと3:1から大きくずれることがあります。孫の数ごとに、しわの数がおよそ95%の確率で入る範囲を計算すると、次のようになります。
| 孫の数 | しわの数(理論上) | しわの数(およそ95%の範囲) | 丸:しわ の範囲 |
|---|---|---|---|
| 20個 | 5個 | 2〜9個 | 1.2:1 〜 9:1 |
| 100個 | 25個 | 17〜34個 | 1.9:1 〜 4.9:1 |
| 1,000個 | 250個 | 223〜277個 | 2.6:1 〜 3.5:1 |
| 10,000個 | 2,500個 | 2,415〜2,585個 | 2.9:1 〜 3.1:1 |
メンデルの実験の結果
メンデルは1865年にエンドウの交配実験の結果を発表し、翌年に論文として出版しました。7つの対立形質について、孫の代で次のような結果を得ています。
| 形質 | 顕性の形質 | 潜性の形質 | 孫の数(顕性:潜性) | 比 |
|---|---|---|---|---|
| 種子の形 | 丸 | しわ | 5,474:1,850 | 2.96:1 |
| 子葉の色 | 黄色 | 緑色 | 6,022:2,001 | 3.01:1 |
| 種皮の色 | 有色 | 白色 | 705:224 | 3.15:1 |
| さやの形 | ふくれ | くびれ | 882:299 | 2.95:1 |
| さやの色 | 緑色 | 黄色 | 428:152 | 2.82:1 |
| 花のつき方 | 葉のつけ根 | 茎の先端 | 651:207 | 3.14:1 |
| 茎の高さ | 高い | 低い | 787:277 | 2.84:1 |
どの形質もほぼ3:1です。種子の形では、7,324個を調べて丸5,474個・しわ1,850個(2.96:1)でした。このシミュレーターの「📗 メンデルと同じ7,324個」で、同じ数の交配を試せます。グラフの★がメンデルの結果です。
参考
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」理科 第2分野(5)生命の連続性(イ)遺伝の規則性と遺伝子/「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」(交配のモデル実験)
- 文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」
- 日本遺伝学会『遺伝単(遺伝学用語集 対訳付き)』(2017年。顕性・潜性への言いかえ)
- G. Mendel(1866)Versuche über Pflanzen-Hybriden(エンドウの交配実験の論文)
- 中学校理科の教科書(第3学年)「遺伝の規則性と遺伝子」
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「遺伝の規則性シミュレーター(メンデルの交配実験)」 https://shimulabo.com/sims/mendel-iden/よくある質問
- 「優性・劣性」と「顕性・潜性」は同じ意味?
- 同じ意味です。「優性」は優れている、「劣性」は劣っているという誤解を生みやすいため、日本遺伝学会が2017年に「顕性」「潜性」への言いかえを提案しました。今の中学校の教科書は「顕性」「潜性」を使っています。
- 実験の結果がぴったり3:1にならないのはなぜ?
- どの遺伝子の組み合わせになるかは偶然で決まるため、数が少ないとずれます。孫が100個なら、丸:しわが2:1や4:1くらいになるのは珍しくありません。数を増やすほど3:1に近づきます。メンデルも7,324個の種子を調べて2.96:1という結果を得ています。
- 子(Aa)がすべて丸になるのはなぜ?しわの遺伝子はなくなったの?
- Aとaの両方をもつと、顕性の形質(丸)だけが現れるからです。しわの遺伝子aはなくなったわけではなく、子の中に受けつがれています。そのため子どうしをかけ合わせると、aaの組み合わせになった孫でしわが再び現れます。
- 孫の丸い種子がAAかAaかを見分けるには?
- 見た目では区別できません。しわの種子(aa)をつくる個体とかけ合わせ、できる種子がすべて丸ならAA、丸としわがおよそ1:1ならAaと分かります。
- 分離の法則とは?
- 対になっている遺伝子が、減数分裂で生殖細胞がつくられるときに分かれて、別々の生殖細胞に入ることです。Aaの親からは、Aをもつ生殖細胞とaをもつ生殖細胞が1:1の割合でつくられます。
- 人の血液型も同じしくみ?
- ABO式血液型も遺伝子の組み合わせで決まります。ただし、AとBの遺伝子はどちらも現れ(AB型)、Oの遺伝子は潜性です。エンドウの種子の形より少し複雑で、「血液型 遺伝 判定」で組み合わせを確かめられます。