このシミュレーションでわかること
このシミュレーターでは、①回る円盤の上で玉を投げる実験でコリオリの力の正体(回転する座標から見た見かけの動き)を確かめ、②緯度によるコリオリパラメータ f=2Ωsinφ の違いと、低気圧・高気圧のまわりの風の吹き方(北半球と南半球で反対)を見て、③ハドレー循環・フェレル循環・極循環と、貿易風・偏西風・極偏東風の向きを地球の断面と地図で確かめます。
| 科目 | 単元 | 学習指導要領(平成30年告示)の内容 |
|---|---|---|
| 地学基礎 | (1)地球のすがた ア(ウ)大気と海洋 ㋑ 大気と海水の運動 | 大気と海水の運動に関する資料に基づいて、大気と海洋の大循環について理解するとともに、地球規模で熱が輸送されていることを見いだして理解すること |
| 地学 | (3)地球の大気と海洋 ア(ア)大気の構造と運動 ㋑ 大気の運動と気象 | 大循環と対流による現象及び日本や世界の気象の特徴を理解すること(「大循環」による現象では、偏西風波動と地上の高気圧や低気圧との関係も扱う) |
高等学校学習指導要領解説 理科編は、地学基礎(p.155)で年平均の風の分布などの資料から偏西風・貿易風・ハドレー循環などを理解させること、地学(p.172)で地衡風が気圧傾度力とコリオリの力のつり合ったときの風であること、中緯度で偏西風が吹いていることを取り上げることを示しています。
授業での使い方
導入(①回る円盤):円盤を反時計回りに回し、中心から「受ける人」に向けて玉を投げます。外から見ると玉はまっすぐ進むのに、円盤の上の人には右へそれて見えることを確かめます。回転を時計回りにすると左へそれることから、北半球と南半球の違いにつなげます。
展開(②緯度と風):緯度のスライダーを北緯90°から0°、南緯90°へ動かし、f=2Ωsinφ のグラフと、低気圧のまわりの風の向きの変化を観察します。赤道では渦ができず、南半球では向きが反対になることを確かめます。左の低気圧の図の矢印で、地上の風が気圧傾度力・コリオリの力・摩擦力のつり合いで等圧線を斜めに横切ることも説明できます。
まとめ(③大気の大循環):緯度ごとの循環と地上の風の名前を表にまとめます。貿易風が「北東」から、偏西風が「南西」から吹く理由を、南北の流れがコリオリの力で曲げられることから説明させます。
生徒への問いの例です。
- 回る円盤で、玉の速さを2倍にすると、曲がって見える角度はどうなるでしょう。(ふちに届くまでの時間が半分になるので、角度も半分になる)
- 北緯30°と北緯90°では、同じ風速の風にはたらくコリオリの力は何倍ちがうでしょう。(sin30°=0.5、sin90°=1 なので2倍)
- ハドレー循環で赤道へ向かう地上の風は、なぜ「北東貿易風」になるのでしょう。(北から南へ向かう空気が、コリオリの力で進む向きの右=西へ曲げられるから)
しくみ・解説
用語の意味
- コリオリの力(転向力)とは、回転する座標系(地球の上)から運動を見たときに現れる見かけの力で、運動の向きに垂直にはたらき、物体の速さは変えずに向きだけを変えます。
- コリオリパラメータとは、f=2Ωsinφ で表される量で、緯度φでの地面の回転の強さを表します(単位は /s)。
- 気圧傾度力とは、気圧の高い方から低い方へ空気を押す力で、等圧線に垂直にはたらきます。
- 地衡風とは、上空で気圧傾度力とコリオリの力がつり合って、等圧線に平行に吹く風です(北半球では低圧側を左に見て吹きます)。
- 大気の大循環とは、緯度によって太陽放射の受熱量が違うことで起こる、地球規模の大気の流れで、低緯度から高緯度へ熱を運んでいます。
コリオリの力の式
コリオリパラメータ f = 2Ω sinφ
地球の自転の角速度 Ω = 2π ÷ 86,164 s(1恒星日)≒ 7.29×10⁻⁵ rad/s
sinφ がつくのは、その場所の地面が鉛直な軸のまわりに回る速さが Ω sinφ になるからです。北極では地面は円盤と同じように Ω で回り、赤道では鉛直な軸のまわりには回っていない(地軸と地面が平行)ので、水平に動く物体にはたらくコリオリの力は0になります。南半球では sinφ が負になり、向きが反対になります。
緯度ごとの早見表
| 緯度φ | sinφ | f=2Ω sinφ[/s] | 風速10 m/sの空気1 kgにはたらくコリオリの力 |
|---|---|---|---|
| 0° | 0.000 | 0.00×10⁻⁵ | 0.00×10⁻⁴ N |
| 10° | 0.174 | 2.53×10⁻⁵ | 2.53×10⁻⁴ N |
| 20° | 0.342 | 4.99×10⁻⁵ | 4.99×10⁻⁴ N |
| 30° | 0.500 | 7.29×10⁻⁵ | 7.29×10⁻⁴ N |
| 35° | 0.574 | 8.36×10⁻⁵ | 8.36×10⁻⁴ N |
| 40° | 0.643 | 9.37×10⁻⁵ | 9.37×10⁻⁴ N |
| 45° | 0.707 | 10.31×10⁻⁵ | 10.31×10⁻⁴ N |
| 60° | 0.866 | 12.63×10⁻⁵ | 12.63×10⁻⁴ N |
| 90° | 1.000 | 14.58×10⁻⁵ | 14.58×10⁻⁴ N |
計算例1:北緯35°で風速10 m/sの風が吹いているとき、空気1 kgにはたらくコリオリの力の大きさは何Nですか。
答え:f=2×7.29×10⁻⁵×sin35°=2×7.29×10⁻⁵×0.574≒8.36×10⁻⁵ /s。C=m f v=1×8.36×10⁻⁵×10≒8.4×10⁻⁴ N
計算例2(地衡風):北緯35°で、400 km 離れた等圧線の間で気圧が4 hPa(400 Pa)違うとき、地衡風の速さは何 m/s ですか(空気の密度 1.2 kg/m³、摩擦は考えない)。
答え:気圧傾度力(1 kgあたり)=(1/ρ)×(Δp/Δn)=(1/1.2)×(400/400,000)≒8.3×10⁻⁴ N。これがコリオリの力 f v とつり合うので、v=(Δp/Δn)÷(ρ f)=1.0×10⁻³÷(1.2×8.36×10⁻⁵)≒10 m/s
計算例3(回る円盤):半径1 mの円盤が1分間に10回転しています。中心から秒速1 mで玉を転がすと、円盤の上から見て何度それて見えますか。
答え:ふちに届くまで 1 m÷1 m/s=1秒。その間に円盤は 360°×10÷60=60° 回るので、60°(反時計回りなら右へ)。
低気圧・高気圧のまわりの風
| 低気圧 | 高気圧 | |
|---|---|---|
| 北半球 | 反時計回りに吹きこむ | 時計回りに吹き出す |
| 南半球 | 時計回りに吹きこむ | 反時計回りに吹き出す |
| 赤道付近 | 渦になりにくい(台風は緯度5°以内ではほとんど発生しない) | — |
地上の風は、気圧傾度力・コリオリの力・摩擦力の3つがつり合って吹くため、等圧線を斜めに横切って低気圧側へ向かいます(横切る角度は海上で小さく、陸上で大きくなります)。上空では摩擦がほとんどないので、等圧線に平行な地衡風になります。
大気の大循環と地上の風
| 緯度 | 循環 | 地上の風 | 気圧帯 |
|---|---|---|---|
| 0〜30° | ハドレー循環(赤道で上昇し、緯度30°付近で下降) | 貿易風(北半球は北東の風、南半球は南東の風) | 赤道低圧帯(熱帯収束帯)/亜熱帯高圧帯 |
| 30〜60° | フェレル循環(緯度30°付近で下降し、60°付近で上昇) | 偏西風(北半球は南西の風、南半球は北西の風) | 亜熱帯高圧帯/亜寒帯低圧帯 |
| 60〜90° | 極循環(緯度60°付近で上昇し、極で下降) | 極偏東風(北半球は北東の風、南半球は南東の風) | 亜寒帯低圧帯/極高圧帯 |
赤道付近であたためられた空気は上昇し、上空を高緯度へ向かって緯度30°付近で下降します(ハドレー循環)。下降した空気が地上を赤道へもどるとき、コリオリの力で西へ曲げられて貿易風になります。緯度30°付近から高緯度へ向かう地上の空気は東へ曲げられて偏西風になります。中緯度の上空には、南北の温度差によって強い偏西風(ジェット気流)が吹き、南北に蛇行しながら(偏西風波動)低緯度と高緯度の間で熱を運んでいます。日本付近の天気が西から東へ変わるのは、この偏西風のためです。
このシミュレーションで単純化していること
- ①の円盤は半径1 mとし、玉と円盤の摩擦は考えていません。外から見て等速直線運動する玉を、円盤とともに回る座標に直して描いています(遠心力も含めた見かけの動きになります)。
- ②の低気圧・高気圧の空気の動きは、気圧傾度力・コリオリの力(f を緯度に合わせて sinφ 倍)・摩擦力を時間・長さの単位をそろえずに計算したモデルで、向きと曲がり方の違いを示すためのものです。実際の風速・大きさではありません。
- ③の循環と地上の風は年平均の理想化したモデルです。実際には、気圧帯は季節によって南北に動き、海と陸の分布によって季節風なども生じます。フェレル循環は、ハドレー循環と極循環にはさまれて生じる見かけの循環です。
- 図の大気の厚さは誇張しています(対流圏の厚さは約11 km で、地球の半径約6,400 km に比べてとても薄い)。
参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編」地学基礎 p.155、地学 p.172(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1407074.htm)
- 国立天文台 編『理科年表』(丸善出版)…地球の自転の角速度・地球の大きさ
- 高等学校「地学基礎」「地学」の教科書(大気の大循環・コリオリの力・地衡風の単元)
引用・転載について
本ページのシミュレーション結果・数値は、出典を明記いただければブログ・ニュース記事・SNS・授業や社内資料への引用を歓迎します。事前連絡は不要です。
出典:シミュラボ「コリオリの力と大気の大循環シミュレーター(偏西風・貿易風)」 https://shimulabo.com/sims/coriolis-henseifu/よくある質問
- コリオリの力とは何ですか?
- 自転している地球の上で運動する物体にはたらいて見える見かけの力で、転向力ともいいます。北半球では進む向きの右向き、南半球では左向きにはたらき、大きさは 2mΩv sinφ です(Ω=7.29×10⁻⁵ rad/s、φ=緯度)。
- コリオリパラメータ f=2Ωsinφ は赤道と極でいくつですか?
- 赤道(φ=0°)では sin0°=0 なので f=0、極(φ=90°)では最大の f=2×7.29×10⁻⁵=1.46×10⁻⁴ /s です。北緯35°では約8.36×10⁻⁵ /s です。
- 北半球の低気圧のまわりで、風が反時計回りに吹きこむのはなぜですか?
- 空気は気圧傾度力で低気圧の中心へ向かいますが、北半球ではコリオリの力で進む向きの右へ曲げられるため、中心のまわりを反時計回りに回りながら吹きこみます。南半球では左へ曲げられるので時計回りになります。
- 偏西風と貿易風は、なぜ吹く向きが反対なのですか?
- どちらも南北に流れる地上の空気がコリオリの力で曲げられたものです。ハドレー循環で赤道へ向かう空気は西へ曲げられて東寄りの貿易風に、緯度30°付近から高緯度へ向かう空気は東へ曲げられて西寄りの偏西風になります。
- お風呂の栓をぬいたときの渦の向きは、コリオリの力で決まりますか?
- ほとんど決まりません。浴槽のような小さく短い時間の流れでは、コリオリの力は他の力(水の最初の動きや浴槽の形の影響)に比べてとても小さいためです。コリオリの力が効くのは、低気圧や大気の大循環のような数百km以上・数時間以上の大きな運動です。
- 地衡風とは何ですか?
- 上空で、気圧傾度力とコリオリの力がつり合って等圧線に平行に吹く風です。北半球では低圧側を左に見て吹きます。地上では摩擦力がはたらくので、風は等圧線を斜めに横切って低圧側へ吹きこみます。